知らなかった。監督が、そんな過去を持っていたなんて。 正直、最初からずっと疑っていた。僅かながら影山からの刺客だとも思ったことがあった。 だが実際、影山の被害者という自分と同じ立場で、サッカーを愛していた人間だと分かって俺は安心した。 響木監督の話では、久遠監督のことしか理解できなかった 「響木監督」 「…」 「黒田は、一体何者なんですか。」 黒田の髪が風に揺れる。響木監督は表情一つ変えずに上を見た。 「強いて言えば…神の力作、だろうか。あいつは兵器的実力の持ち主であり、驚異的な指導力を持っている。」 「神の力作…」 その言葉を聞いて、悪いイメージしか浮かばなかった。 響木監督はそれ以上黒田のことは喋らなかった。 もしかすると黒田は、何者かに支配され、地獄のような特訓をさせられ、孤独に生きてきたんじゃないか、と考えてしまった。 その考えは皆も同じだったらしく、お互いに顔を見合わせたが言葉は交わさなかった。 . |