pure

□11
1ページ/5ページ



いよいよこの日が来た。いや来てしまった。試合までの2日間、ろくに休んでいない気がする。それもいいこと一つもなかった。あー、こんなコンディションじゃ試合にならない。頼む久遠さん、スターティングには入れないでくれ!

と、久遠さんの前で目で訴える。
久遠さんは小さく頷いた。

「ではスターティングイレブンを発表する。FW、豪炎寺、吹雪、基山。MF、鬼道、風丸、緑川。DF、壁山、綱海、しろ、木暮。」

なん・・・・・・・・だと!?

久遠さんは最後に円堂さんの名前を呼んだ。
なんだか泣けてくる。思わず泣けてくる。

「おいしろ、お前DFだったか?」
「基本どこでも出来ますから…はぁ、参りましたね。」
「…へぇ。」

不動さんに、失礼しますと言ってフィールドへ入った。
あー、ガクブルってこういうことを言うんじゃないでしょうか。

試合開始のホイッスルが鳴り、FWとMF軍が前線へ上がる。データ通りなら全てシュートは防げるはず。

試合開始早々、キャプテンニースさん率いる4人が、ボールをコントロールする鬼道さんを囲んだ。

(あれがボックスロックディフェンス…)

鬼道さんは逃げられずにあえなくカットされてしまった。くるぞー。

「綱海さん、お願いします!」

衝突を避けるために声を張り上げ、綱海さんにボールを頼んだが、少し遅かった。
パワーが一番あるジョーさんに主導権を握られ、私は頑張ってシュートを防ぐことにした。

「メガロドン!!」
「「黒田!!」」

走っても間に合わず、シュートはゴールネットを貫く。

「くっそ…」
「…」

円堂さんは唖然とボールを見つめていた。
ていうかなぜ私をDFにしたのか全く意図が分からない。ああそうか、やっと私も一休さんと戦う時が来たのか。

DFの一年生二人は恨めしそうに得点スクリーンを見上げた。
そしてキャプまもは何を思ったか、嬉しそうに皆に声をかけた。
まずは一点取り返すそうだ。

再びイナズマジャパンがボールを動かす。久遠さんを見ると、口パクで“上がれ”と言っていた。
本当に正気なんだろうか。DFに上がれだなんて…

仕方なくNFに続いて走り出す。周りのDFは驚いていた。

まぁ当然ながら再びBRDに掛かる我らがFW。私はなんとかそれをすり抜けさせようと豪炎寺さんに声をかけた。

「上!」
「!!」

咄嗟に体が動いた豪炎寺さん。指示通り上に蹴り上げると私もジャンプする。案の定ニースさんもジャンプする。明らかに私の方が高かった。

「な、!!」
「残念でしたね」

そのまま必殺技に持っていこうとしたが、コツを忘れて普通の爆走シュートに。
相手チームのGKが必殺技を出したけどそれを一瞬で破ってゴール。

着地するとゴールが入ったホイッスルが鳴る。スタジアムは怪しい雰囲気に包まれる

『おっと!シュートを決めたのは無名の選手黒田しろ!!ビッグウェイブスのGKをいとも簡単に突破したあのシュートは一体…!!』

ニースさんは目を見開いて私を見た

「…ただのシュートです。」
「そんなはずは…!!まさかドーピングか!」
「違いますよ!なんなら身体検査でもしますか!?」

やけになってバッと腕を広げると、ニースさんは赤面した。あ、ごめんなさい、と謝って腕を下ろした

「…黒田しろか。君をマークするよ」

その言葉を聞いてハッとした。

久遠さんは私にマークさせてスキをつくらせるつもりなのかと。

DFの位置に戻ると円堂さんがキラキラした目で私を見ていた

「黒田!!お前すごいシュート持ってるんだな!!」
「いえ、普通のシュートです…」

そして今度はビッグウェイブスのボールで始まった。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]