そして始まる練習試合。 私のポジションはなぜかMF。こんなの納得いかねぇよ!と久遠さんに言ったところでスルーされるのはわかってるし、さっき口答えは許さないだとか言ってたからMFで我慢してやるよ。 ちょっと仲良くなれた飛鷹さんを目で追う。これじゃまるでストーカーじゃないか。あ、からぶった。カッコよく空振りした。そして髪を直している。 (可愛い…) 私もサッカーやりたくなってきて前線に上がる。土方という人にパスしようとした風丸という人。だけどそのボールは最年少だと思われる宇都宮くんにカットされた。 そういえばこのこ、お母さんがあれで苦労してるんだよな… でもそれをフィールドに持ち込むのは正直迷惑だよね。 と、すぐさまカットする。 宇都宮くんあんぐり。 「やる気、ないでしょ」 「!!」 「風丸さん!」 ボールをパスする。立ち尽くす宇都宮くん。 「同情する気はないよ。ただ…お母さん大事にしてあげて。」 「え……なん、で…」 「失ってからじゃ、モノの大切さは分からないからね。」 できるだけ笑顔でそう言うと、チームへ戻った。 いつも見てたよ。たまにラーメン食べに行ったもん。ランニングしてるとき仕込みしてていい匂いしてたもん。 「黒田さん、」 「試合」 「……ずるいじゃないですか…」 なにか聞こえたけど、聞こえない振りをしてあげた。 . |