pure

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食事の後はすぐ練習に入る。
グラウンドに出て各自ストレッチを行う。まだ誰とも仲良しには慣れていないしろは隅っこで一人でみんなの様子を伺っていた。
ぼっち世界を繰り広げているのはしろだけではなく、不動と飛鷹もまたぼっちで、そんな彼らをマネージャーの木野は気にかけていた。

そこへ遅れてきた宇都宮が円堂を呼んで駆けてきた。
緑川と壁山が合宿所で止まることを進めたが、自分の部屋でないと眠れない、と顔を赤らめて宇都宮が言った。
するとすかさず孤高の反逆児始動。

「はっ。大方ママに子守唄でも歌ってもらってんじゃねぇの?」

いつのまに参加してんだ、とうらやましそうにしろが彼を見る。遠くの方で。
退屈になったしろは土手に座って膝に頬杖を付いてメンバーを眺めていた。

(不動さんってほんと正確悪いよね。私も共感できるけど。)

遠くを見ると、久遠が冬花を引き連れてやってきた。皆集まっているから私もだ、としろはダラダラ動く。
久遠が喋り出した時、しろはメンバーの一番後ろにいたがしっかり話は聞いていた。

「お前たちも顔は知っていると思うが、改めて紹介しておく。娘の冬花だ。今日からマネージャーとして参加させる。」
「マネージャー?」
「久遠冬花です。皆さん、よろしくお願いします」

冬花は遠くにいるしろを見て口角をゆるく上げた。

「私、マネージャーなんてやったことないから、ちゃんとできるかわからないけど」
「大丈夫だって。分からないことがあればなんでも俺に聞いてくれ!」

(毎日私のマネジメントしてたくせに…あれがマネージャーの仕事なのよ冬花。)

「よろしくお願いします、守くん。」

そう言った瞬間、しろと久遠の表情が曇る。
知らずに円堂の表情は晴れていた。

「おー、思い出したのか?」

切ない昔話を切り上げるように、冬花は笑顔で円堂と会話する。綺麗な声が二人には痛かった。

久遠は遠くにいたしろを見て、目でメッセージを送った。
受け取ったしろはメンバーの中へ入っていき、馴染んだ。

久遠が言うには、今のイナズマジャパンでは世界に通用しない。それから延々と説教じみた演説のようなものが始まる。
ほぼ毎日のように聞いていたしろは、またかよ。と母親の説教を聞くように心の中でうなだれた。

「以上だ!」

しろにはその言葉が、“異常だ”にしか聞こえなかった。


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