合宿所の各自の部屋。 俺は筋トレに勤しんでるっていうのにキャプテンの馬鹿でかい声に顔をしかめ、腕立て伏せを中断する。 一体何のようだ、と舌打ちをしてジャージを羽織って部屋を出る。 鬼道くんに聞けば、どうやら新しいマネージャーらしい。 そんなにマネージャー増やしてどうすんだよ、と監督に突っ込んでやりたい。もっと有能な選手でも増やしたらどうだ。 集まった場所は食堂。何時も通り一番奥の机について、マネージャーと監督の話を聞く。 「残念ながら女子なのでな、選手には入れてやれなかったヤツだ。サッカーの技術はお前らより遥かに上を行く。」 なんだ、有能選手じゃん、と鼻で笑う。だが女ときた。きっとゴリラみてぇなやつだろ、あー華が無いねぇ。 監督が呼ぶと、入口から入ってきた。 小柄で細い。ゴリラじゃなくてよかったが、そいつを一言で表すとしたら、“チャラい”。 何で学ランにスカート何だよ。なんでそんな尖った腕輪してんだよ。何でヘッドフォン取らねぇんだよ。てか何でクラシックなんだよ。 もう喉の手前まで来ているツッコミ。全部吐き出してやりたいが、まず前に立つチャラマネージャーの紹介だ。 「初めまして、黒田優姫と申します。今年で14となります。恐れ多くも日本代表のマネージャーを務めさせていただくことになりました。以後お見知りおきを。」 こんな敬語を使う中学生がいただろうか。 飛鷹だってここまでじゃない。飛鷹だって異常なほどの日本語力だが、こいつはさらに上だった。 いや、もしかするとこいつ、監督に媚売ってるんじゃねぇか?だから監督が居なくなれば態度も一変する。俺は二重人格と見た。 . |