騒がしい廊下くらいは存在する。今、この瞬間に。足音が沢山近付いてきて、足の裏に振動が伝わる。 廊下の奥のカーブを見ていると、大量の後輩が攻めてきた! 先頭を走るグランは、私を見るなり「あー!」と窓を指差し、皆がそっちを見たすきにダッシュで向かってきた。 「優姫さん!!」 「てめー基山ァ!!」 「ヒロト!」 グランは犬のように私にタックルして、泣きながらひっついてきた。よしよし、と頭を撫でる。 追い付いた他の連中も私にタックルする。床に倒れたけど皆可愛いから許す 「皆ありがとう!助かったよ!」 「こんな格好で外走るなんて、優姫さんのためだけだからね!」 「何そのツンデレ。恥ずかしい格好しちゃって、あーあ。」 まぁ要するにピチピチ悪趣味全身タイツユニフォームだ。髪の毛がモサモサして擽ったい。 「皆聞いて、私大丈夫だから、皆はエイリアの最後を華やかに飾れるように、練習しておいで」 自分で言って、自分で傷ついた。エイリア支持者なんて何処にもいないけど、自分のチームが負けることを前提に戦うなんて、誰も嬉しいなんて思わないし、練習に励みたいとも思わない。 皆は暗い顔をして優姫を見た。 「私達のサッカーは間違ってるよ。あの雷門中の子達ももっと強くなる。だからいつかは負けちゃうんだ。」 自分で言って自分で泣いてる。起き上がって涙を拭うと、皆は一斉に立ち上がった キョトンと間抜け面で見上げる 「俺達には、宇宙最強の優姫さん達が居る。」 「だから俺達は負けても勝ってる。」 「優姫のおかげなの。」 誰かが小田和正の歌を流し出す。 時を越えて 君を愛せるか 本当に君を 守れるか BGMに乗せて、皆一人一人感動的なセリフを吐いて去っていく。 「優姫先輩が居るから、俺らは頑張れるんです」 「優姫さん、私がついてます。」 「一生ついていきます」 云々。BGM係もセリフを言って去って、残された私と治はポカーンとしていた。私は去ってゆくその子の手に握っているiPodを指さした。 「何であの子小田和正入ってるの?」 「きっとファンなんだろう。ほぼ全曲入ってるぞ。」 「うそやん。」 . |