ここには正式な教室なんてものは無い。サッカーするためだけに生まれた学園。 そんな学園の、私は3年生であり、トップクラスのサッカーチームのキャプテンでもある。 唯一教室と呼べる部屋は、この学園のチームキャプテンの溜り場となっているのだ。 この学園はイカレている。何がって校長みたいなポジションの大仏だ。 息子が死んだショックでサッカーを武器にして居る。建造物等損壊罪に問われるレベルだ。だけど皆エイリアンですって言っとけば誰も反抗できないだろうということナリよ。 もう15なんだから私は騙されないぞ。 溜り場で風と一体化しながら音楽を聴く。窓の外は綺麗な景色。流石富士山なだけある。 ガラリ、とドアが開いたらしいが、それどころじゃない私はまだ風になっていた。 こつ、と足音が聞こえたと思った瞬間、体をすっぽり包まれる。誰だか分かっていたので顔を上に上げれば、優しそうな笑みを浮かべたデザーム様がいた 彼の口元が「優姫」と動く。イヤホンを外して「治、」と言う。額にキスを落とされる 「こんなところで何してるんだ?」 「暇なの。なんか今リュウジが頑張ってるらしいよね」 「他人事だな。」 「ちゃんと心配してるもん。」 デザーム様は私を解放して隣に立つと、建造物等損壊罪、と呟いた。私もさっきそう思った。 「子供に犯罪を犯させるなんてな。」 「誰もが通る道なのです」 「真似しなくてもいい。明日じゃなかったか?緑川が雷門中と試合するの。」 「うん。一緒に見に行こうよ」 「そうだな。」 そこへ、今度はドアが開く音が聞こえた。そして勢い良くバーンとガゼルが走って来る。 「うっわお前ホント止せや!」 「良いだろこの決めゼリフ!」 「良くねー!!ばーか!厨二病!」 「凍てつく闇の冷たさを!!」 たのしそーだねー、と言うとバーンがこっちに来てデザーム様を盾にする 「治!コイツ中二病だ!」 「安心しろ。なりきってるってことじゃないか。」 「デザームも何か個性とか作ろうじゃないか!」 「あのカラーコンタクト以外にもどう個性を増やせって言うんだ。」 「括れだ括れ!!」 ガゼルがそう言うと、私とデザーム様は首を傾げた。バーンが今度はデザーム様の前に立つ。 「コレ見ろよ。ガゼルが考えたんだぜ。治逃げたほうがいいよ」 二人でバーンが広げたノートを見る。そこには有り得ない括れのデザーム様が立っていた。なにこのヘタウマタッチ。 デザーム様は隣で見事に顔を歪めていた。 「……涼野、お前…」 . |