午後の練習も終わり、私はバイトへ向かうべく、走り出した。 だが後ろから声が掛かる。 「黒田さん!」 「ん、ああ虎丸くん、これから店の手伝いですか?」 「はい!黒田さんもバイトですか?」 「そうですよ。夕方ですし、仕事帰りの人とか買いに来るんです。」 「じゃあ忙しくなりそうですね」 「はい。虎丸くんも頑張ってくださいね。」 「はい!」 すっかり仲良くなったようだ。分かれ道まで一緒に帰り、それから私はバイトへ向かった。 チャリは還らぬ物となり、移動手段は徒歩しかない。 しょぼくれて家の鍵を閉めると、後ろから呼ばれた。 「黒田」 「あれ、不動さん?どうしてここに…」 「ここがお前の家か。立派なもんだな」 「遊ぶ約束してましたっけ?これからバイトなんですよ」 「遊ばねぇよ馬鹿。乗ってけよ。」 え、と言うとママチャリの後ろを指さされる。2ケツるすってことだろうか。 「警察撒けますか?」 「そもそも見つからねーような道行くからな。」 「てかバイト先知ってるんですか?あの花屋ですよ」 「あー知ってる。ほら早く乗れよ」 「ではお言葉に甘えて。」 私は昔友達の荷台に乗せてもらった時と同じ乗り方をした。後ろ向きである。 「落ちんなよ」 「大丈夫ですよ」 いい交通手段が見つかった。これからは乗せてってもらおうかな。 会話もせずに花屋の裏へ着いた。確かに人気のない道を通ってきた。 「ありがとうございました!またお願いしますね」 「調子に乗んなハゲ」 「ハゲはそっちですよ」 「てんめぇ、ぶちのめされてぇか」 「ごめんなさーい!ありがとうございました!」 お前なんて首になっちまえ!と罵られたけど気にしない。店に入っておじさんに挨拶をした。 「こんにちは!」 「よう。彼氏かい」 「あはは、嫌ですね。」 「傷つくぞー。ほら着替えた着替えた!」 「はーい」 ここはお父さんの親友、坂元さんが経営していて、私はバイトをさせてもらっている。良い人だ。 . |