夕日の中、宇都宮くんの元気な声が響く。毎日お疲れ様ですな。 自分も合宿所に帰ろうとした時、彼に呼び止められる。 「黒田さん」 「?はい、なんでしょう」 「少し、お話いいですか?」 若干ビビリ気味に声を掛けてきた宇都宮君。いいよ、と笑顔で答えると、グラウンドの端っこに案内され、二人で土手に座った。 「なんで、俺のこと知ってるんですか。」 「朝ランニングしてるとき、仕込みやってたの君でしょ。小さいのにえらいなー、とか思って見てました。」 「それだけ、ですか?」 意味深な表情で彼は私を見る。 「近所の花屋で…」 「あはは、バレてました?」 「やっぱり黒田さんでしたか。」 「はい。ほぼ毎日、宇都宮くんを見かけてました」 呼びにくいので虎丸でいいですよ、と言われて虎丸くん、と言ってみた。彼はちょっと笑った。 「昨日、俺に言ったことなんですけど…」 「ごめん、傷つけちゃいましたか?」 「いえ、俺、サッカーもやりたいけど、お母さんの店も手伝わなきゃだし、迷ってたんです。でも黒田さんが言ってくれたおかげで、道が見えた気がしました。」 「そっか、力になれたなら嬉しい限りです。」 そう言ってどちらともなく立ち上がった。 「じゃあ俺、行きます」 「うん、練習お疲れ様でした。」 虎丸くんは頭を下げて走り出した。私もちょっと安心して歩き出そうとしたけど、また呼び止められる。 「はい?」 「辛かったりしたら、俺が話聞きますから!!」 こんなとき、きょとんって言葉がベストなんだろう。きょとんとしていると、虎丸くんは顔を真っ赤にしてダッシュで逃げていった。 これが私のスキル“独特なオーラ”なんだろうか。 ダーティーな過去や生活をしている子供が集まってくる、みたいなもんだろうか… . |