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すると今まで真っ暗だったその場所が、光によって露になった。距離感が分からなかったが、ずっと奥から小さな明かりが順々に灯ってゆく。それはスタジアムの奥で、広さが目に見える。地下ならではの冷たい空気が二人を包んだ。
エレベーターが閉まり、スタジアムの全貌が明らかになり、そこへ続く通路の明かりもついた。

「久しぶりに来ましたよ。」
「何でこんなにいい施設があるのに、ここで練習しないんだ?」

歩きながら飛鷹が尋ねるとしろは照れながら言った

「独りが嫌だからです。こんな広い場所で、たった一人で閉じ込められて練習するなんてとてもできません。それに暗いんですもん。」

スタジアムと通路の境目には靴を履き替える場所があり、二人で靴を履いてスタジアムに降りた。
スタジアムのラインは全て地面に埋め込まれたLEDで、とても近代的な作りだった。

「さっき響木さんから連絡がありました。ボールを使ってはいけないそうです。蹴りの練習だけですね。」
「ああ。それは前々から言われている。」
「それなら話が早いっすね。練習しましょうか」

それから二人で蹴りの練習をした。ボールを扱えるしろも、飛鷹に合わせて蹴りの練習をしていた。
一時間くらい練習をすると、エレベーターの動く音がして二人は動きを止めた。

「誰だ?」
「私の保護者です。」

「しろ、飛鷹。」

現れたのは久遠だった。彼が「練習を終わりにしろ。帰るぞ」と言うと、しろは嬉しそうに笑った。
その顔を見て飛鷹は安心した。

三人はエレベーターに乗り込み、地上へ戻った。


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