練習するぞーと叫んでいた本人が、夕方浜へ出ていった。気になって付いてゆくと、綺麗な女の人に会っていた。 恋愛の予感!! 声は聞こえなかったが、なんだか嬉しそうだった。恋愛の予感!! 「あ…」 「ん?あ!黒田!」 「えっ、バレた…」 円堂さんが私の名前を呼ぶと、隣にいた女の人が駆け寄ってきた。砂浜なのに勇ましい。 女の人は私の手を掴むと、「一緒に来て!」と行って引っ張っていった。 「円堂くん、この子借りるわね!」 「え、どこ行くんだよ!」 「この子、重要な鍵なの!皆には特訓しに行ったとでも行っておいて!ちゃんと帰すから!」 「えっ、ちょっとお姉さん!円堂さん!」 「なんだか知らねぇけど、任せとけ夏未!」 「そんなぁ!」 そして私は、お姉さんに拉致されました。 たどり着いたのは豪華なリムジン。まさか、誘拐してどこかで私を殺す…え、ガルジルドの手先? 「はじめまして。私は雷門夏未。」 自己紹介をされて、ハッとする。 「は、初めまして、黒田しろです」 緊張しながら自己紹介をすると、彼女は「やっぱりね」と言って真剣な顔をした。 何がです?と尋ねると、私と向き合って口を開いた。 「40年前。円堂くんのお祖父様が亡くなった事件があってね、その事件を調べていたの。」 「40年前?私まだ生まれてませんよ?」 「フフ、直接的にあなたには関係ないかもしれないけど、もしかすれば何かわかるかもしれないの。」 「はぁ…」 40年前、円堂さんのお祖父さんがイナズマイレブンの事故の原因を調べていたけど影山さんに殺されかけてしまったという事件。 私の頭の中ではシュール極まりない絵が浮かんでくる。あかん。 そして、影山のバックに何者かがいる可能性があると言われた。 「それを調べている家に、スペインのプロチームキャプテンの事が出てきたの。」 「スペイン?」 「“ルス・デ・ラ・ルーナ”というチームよ。」 「ルス・デ・……?」 「ルス・デ・ラ・ルーナ。スペイン語で」 「月明かり…?ですか?」 「知ってるの?」 「何故か。」 「そのチームのキャプテンが、あの有名なサッカー選手黒田龍也選手の父親だったの。」 っていうことは私のお祖父ちゃん?お祖父ちゃんがスペインで、おばあちゃんが日本人…。 「貴方のことも、調べさせてもらったわ。ごめんなさいね」 「いえ、お気にせず。」 「…11年前の事件と、40年前の事故、どちらにも“黒田”が関わっていたの。」 そりゃ壮大で、と呟くと、車が停った。外を見るとなんだか大きな豪邸と言おうか。お父さんが高給取りなのは私も知っているけど、こんな家初めて見た。雷門さんはお嬢様なのだろうか。 中で話をするわ、と案内される。ほー、とかへー、とか間抜けな声が出る。そのたびに笑われるけど気にしない。 着いた場所は、綺麗な洋式部屋。椅子に座らされ、正面にお嬢さんがお座りになられる。 「今飲み物を持ってこさせたわ。」 「ありがとうございます。」 執事っぽい人。多分執事だ。その人が、ワインっぽいボトルを持ってきて。グラスに注ぐ。 匂いからしてこれはぶどうジュースだ。 オイシソー(´・ω・`) 「うちの親と祖父が関わっていたって、事件を起こした側なんですか?」 「いいえ。事件の真相を。裏の裏を暴こうとして、両方とも亡くなられたの。」 それを聞いてハッとする。 久遠さんにも、豪炎寺さんにも言われたような気がする。“余計なことに首を突っ込むな”っぽい事を。 きっと二人は、私の上の世代の事を全て知っていたんだろう。きっと皆、お父さん達と繋がりがあった。 私が同じ道を行かないように、皆は… ポタリと、テーブルクロスに涙が落ちた。 手紙で、夢で、泣くなと言われたはずなのに。涙が溢れてくる。 雷門さんは、私の手をそっと握った。 . |