天まで届け!な階段をひたすら登り続けると、やっと頂上へたどり着いた。 「わー、やっと登りきりましたよ!」 「そうだなー…登山みたいだな。この高さじゃ。」 「ですねー。」 手は、繋いだまま奥へと進む。 すると、広く空いた場所に着いた。そこにはベンチが一つ置いてあり、立派な神社が後ろに建っていた。 「ここは、俺の思い入れのある神社なんだ。」 「へぇー、そうなんですか…どんな思い入れがあるんですか?」 二人はベンチに腰をかけた。手はまだ繋いだまま。二人とも繋いでいるのを忘れているようだ。 「俺が、ここで鈴目達と縁を切ったんだ。」 「…そうだったんですか。」 「上見てみろ。」 しろが上を見ると、さっき合宿所から見た時よりも、倍くらい星が近くにあった。 「おぉぉぉ…」 「綺麗だろ。ここなら星がよく見えると思ってな。」 「それで連れてきてくれたんですか!?ありがとうございます!」 「ああ。」 しろは笑って上を見た。そしてぎゅっと飛鷹の手を握る。 「…え?」 「あ」 「うそ、まだ繋いでたんですか!?ごめんなさい!」 「あ、いや悪い!俺も忘れてた!」 ぱっと手を放して照れ隠しで上を見上げる。 温もりが消えて繋いでいた手に冷たい風が当たる。 「なんだか、温もりって直ぐにきえちゃうもんなんですね」 「…そうだな」 「記憶も、そんなもんなんですかね?」 しろが悲しそうに夜空を見上げる。 親の記憶だけが抹消されてしまったしろ。思い出したくても思い出せない。 親のいる自分には、それがどんな気持ちなのかさっぱりわからないが、しろの横顔を見ていたらじわじわと心の奥が焼けるように痛くなった。 「そんなことない。」 「でも私、親の記憶も温もりも思い出せないんです。自分でやっておいて、後で後悔して…失ってからじゃないとその大切さなんてわからないんですよ…もっと、濃い記憶だったら、残っていてくれたんでしょうか…」 「しろは。」 飛鷹が、よく通る声で名前を呼ぶ。 「しろは、それでも今ここにいるじゃないか。」 「…?」 「お前が居なければ、親の大切さは分からなかっただろう?いつだってしろにはしろの親が残した体があるんだから。」 「…飛鷹さん……」 「うまくまとめられねぇけど、生きてればきっと思い出せる。親が残した、一番大事なものだから、絶対自分で傷つけたりすんじゃねぇぞ。」 「…はい。」 そう言うとしろは一筋の涙を、美しい笑顔で零した。 . |