pure

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その日、空き地での練習を終え、夜遅くに合宿所へ戻ってきた飛鷹。
疲れた体を一刻も早く休ませるべく、部屋へ向かう。だが、部屋の前の廊下でしろが窓の外に身を乗り出して上を見ていたので慌てて後ろから引き寄せた。

「うっひゃ!」
「何してるんだしろ!危ないじゃないか」
「飛鷹さん!おかえりなさい!」

予想外の言葉に、飛鷹は呆気にとられる。それも今までに見たことのない人懐っこい笑顔での言葉だったので、飛鷹は顔を赤くして一歩後ずさる。

「お前…何かあったのか?」
「はい、秋ちゃんにお悩み相談をしてもらったんです。」
「お悩み相談?」
「はい。今まで悩んでたことを、秋ちゃんに打ち明けたんです。そうしたらなんだか心が軽くなって、今に至ります。」

なんだそれ、と飛鷹は口角を吊り上げる。

「それより、どうして窓の外を?」
「そうだ!見てくださいよ!」

飛鷹はしろに引っ張られて窓の外を見るように促され、下を見下ろした。

「何もないぞ?」
「上ですよ上!」
「上?」

そう言って上を見上げると、東京では珍しい満天の星空が広がっていた。
そして一筋の流星が流れると、二人同時に声を漏らす。

「見ましたか?」
「ああ。流星か。たしか今の時期は盛んなんだってな」
「よくご存知で!あれはペルセウス座流星群っていって、夏に見られる流星群の中では一番観測しやすい流星群なんですよ!」
「詳しいな。」

飛鷹が心外そうにしろを見ると、「好きですから」と笑顔を向けた。
それから再び空へ目を向けるしろ。
彼女の横顔を見つめる飛鷹。

(こんなことで笑顔になれるなんて、まるで子供だな…。)

だが、そんな純粋な中学2年生なんてそうそういない。飛鷹は、もしかすると、精神年齢も記憶と一緒に止まってしまったんじゃないか、と心配したが、綺麗な横顔を見て安心した。

「綺麗だな…」
「うん。」

そして再び流星が落ちた。

「しろ、ちょっと待っててくれないか?」
「え、どこ行くんですか?」
「すぐ戻ってくる。」

そう言って飛鷹は階段を駆け下りていった。

(ながれぼし、捕まえてきてくれるんだろうか…不可能だけど。)


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