それを影で聞いてたのは綱海で、しめしめ、とさっそくしろの部屋に向かった。 「黒田ー?」 「あ、綱海さん、こんばんは!」 さっきのテンションを引き摺り、笑顔を綱海に向けたしろ。 どうぞ座ってください、と自分も床に座って綱海に促す。 「どうしたんだ?やけに機嫌いいじゃねぇか。」 「秋ちゃんはいい人ですね!悩んでる自分が馬鹿らしくなってきました!」 「そうか」 綱海は心臓に針を刺されたようにチクチクしていた。 この笑顔は俺に向けられているんじゃない。秋に向けられてるんだ。 綱海が少し表情を曇らせると、今までの笑顔が嘘のようにしろの表情も曇っていた。 「どうしました、どこか、具合でも悪いんですか?」 「えっ、いやぁ、なんでもねぇよ!」 「そうでしょうか…何かあったらなんでも言ってくださいね。私、綱海さんにはお世話になっているので。」 「なんでも…?」 綱海が聞き返すと、しろはこくこくと頷いた。綱海は生唾を飲み込んでしろを見つめた。 また、全身がゾクゾクする。 「なんで、」 「はい?」 「いつも笑わねぇんだ?」 「うーん……悩み事が多すぎて、それどころじゃないんです…。もっと、自由に笑っていたいんですが、そんな余裕もないんです。」 しろが俯くと、綱海は彼女の頬に手を添えて正面を向かせた。 「……明日、一日付き合ってくれるか。」 「え?」 「他のことなんて考える余裕ねぇくらい、笑わせてやる。」 そう言ってニカッと笑うと、しろもはい!と言って笑顔を見せた (そうすりゃきっと俺のもの) (落語にでも行くんだろうか…) . |