いよいよこの日が来た。いや来てしまった。試合までの2日間、ろくに休んでいない気がする。それもいいこと一つもなかった。あー、こんなコンディションじゃ試合にならない。頼む久遠さん、スターティングには入れないでくれ! と、久遠さんの前で目で訴える。 久遠さんは小さく頷いた。 「ではスターティングイレブンを発表する。FW、豪炎寺、吹雪、基山。MF、鬼道、風丸、緑川。DF、壁山、綱海、しろ、木暮。」 なん・・・・・・・・だと!? 久遠さんは最後に円堂さんの名前を呼んだ。 なんだか泣けてくる。思わず泣けてくる。 「おいしろ、お前DFだったか?」 「基本どこでも出来ますから…はぁ、参りましたね。」 「…へぇ。」 不動さんに、失礼しますと言ってフィールドへ入った。 あー、ガクブルってこういうことを言うんじゃないでしょうか。 試合開始のホイッスルが鳴り、FWとMF軍が前線へ上がる。データ通りなら全てシュートは防げるはず。 試合開始早々、キャプテンニースさん率いる4人が、ボールをコントロールする鬼道さんを囲んだ。 (あれがボックスロックディフェンス…) 鬼道さんは逃げられずにあえなくカットされてしまった。くるぞー。 「綱海さん、お願いします!」 衝突を避けるために声を張り上げ、綱海さんにボールを頼んだが、少し遅かった。 パワーが一番あるジョーさんに主導権を握られ、私は頑張ってシュートを防ぐことにした。 「メガロドン!!」 「「黒田!!」」 走っても間に合わず、シュートはゴールネットを貫く。 「くっそ…」 「…」 円堂さんは唖然とボールを見つめていた。 ていうかなぜ私をDFにしたのか全く意図が分からない。ああそうか、やっと私も一休さんと戦う時が来たのか。 DFの一年生二人は恨めしそうに得点スクリーンを見上げた。 そしてキャプまもは何を思ったか、嬉しそうに皆に声をかけた。 まずは一点取り返すそうだ。 再びイナズマジャパンがボールを動かす。久遠さんを見ると、口パクで“上がれ”と言っていた。 本当に正気なんだろうか。DFに上がれだなんて… 仕方なくNFに続いて走り出す。周りのDFは驚いていた。 まぁ当然ながら再びBRDに掛かる我らがFW。私はなんとかそれをすり抜けさせようと豪炎寺さんに声をかけた。 「上!」 「!!」 咄嗟に体が動いた豪炎寺さん。指示通り上に蹴り上げると私もジャンプする。案の定ニースさんもジャンプする。明らかに私の方が高かった。 「な、!!」 「残念でしたね」 そのまま必殺技に持っていこうとしたが、コツを忘れて普通の爆走シュートに。 相手チームのGKが必殺技を出したけどそれを一瞬で破ってゴール。 着地するとゴールが入ったホイッスルが鳴る。スタジアムは怪しい雰囲気に包まれる 『おっと!シュートを決めたのは無名の選手黒田しろ!!ビッグウェイブスのGKをいとも簡単に突破したあのシュートは一体…!!』 ニースさんは目を見開いて私を見た 「…ただのシュートです。」 「そんなはずは…!!まさかドーピングか!」 「違いますよ!なんなら身体検査でもしますか!?」 やけになってバッと腕を広げると、ニースさんは赤面した。あ、ごめんなさい、と謝って腕を下ろした 「…黒田しろか。君をマークするよ」 その言葉を聞いてハッとした。 久遠さんは私にマークさせてスキをつくらせるつもりなのかと。 DFの位置に戻ると円堂さんがキラキラした目で私を見ていた 「黒田!!お前すごいシュート持ってるんだな!!」 「いえ、普通のシュートです…」 そして今度はビッグウェイブスのボールで始まった。 . |