護国舞姫の剣

□8#私はMonster
3ページ/3ページ

「ど、どうか、私にその穢れを、う、移してください、ませ」

 ぎょっと私が目を剥くと、八重は可哀想なほど震えていて。
 だからこんなにも震えていたのかと、私にもわかった。

 姉様から一つだけよく言われているのは、私が集める穢れが通常よりも強いものだということだ。
 それに、あの時の化け物を産み出してしまうほどの穢れとすれば、相当な物。
 そんなものを常人が収めることなどできないし、最悪の場合狂ってしまう可能性も高い。

「……それは誰の指示ですか」
「い、いいえ!
 どなたでもございません!
 私が自ら志願したのでございます」

 伊達が止めるのも構わず、私は立って、八重の側に膝を付いた。
 少し躊躇ったが、彼女の肩に触れる。

「どういう事情でも、八重殿にそのようなことをさせるわけには行きません。
 あなたの穢れも私にいただき、浄化するといたしましょう」

 八重が顔をあげる前に触れた箇所から彼女の穢れを拾い上げる。
 八重自身のものというよりも、誰かの穢れを彼女も持っていたようだ。

「な、なりません、葉桜様!」

 拾い上げた穢れはあっという間に私の手の中へと吸い込まれてしまい。
 一瞬倒れそうになるのを堪える。
 どうやら、許容量を超えかけているらしい。
 だからこそ、熱も出ていたのだろう。
 今は昼の光で収まっているのだろうか。
 穢れは、完全に消えるわけではなくとも、昼の光には弱いようだから。

「あ、あぁ……」

 泣きそうな八重の頭を軽く叩いて、笑いかけ、私は彼女を通り抜けて、庭へと降り立った。
 その直ぐ後を伊達が追いかけてきて、肩を掴んで振り返らせる。

「Wait!葉桜、何考えてやがる」

 苛立ちと心配が綯交ぜとなった伊達の瞳が私を見つめる。
 この人は何故私なんかのためにそこまで心を動かすのだろう。

「……手を」
「Ah?」
「手を離しなさい、奥州の龍」

 私が真っ直ぐに睨みつけると、伊達は驚いた様子で目を見開いた。
 肩に置かれた手にも力が入って、痛い。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ