護国舞姫の剣

□3#眠れぬ夜の甘い誘い
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 私を抱き寄せる大きな腕。
 姉様の心地良い香りに包まれて、私は心まで暖かくなる。
 小さな頃に戻ったみたいな気分で、その体に擦り寄ると、思いがけずさらに強い腕に閉じ込められる。

「姉さま……?」

 ああ、違う。
 姉様はもういないのだ。

 いないということが悲しくて、素直に零れた熱い雫を柔らかで暖かで、少し湿ったものが掬いとる。

「怖いDreamでも見てんのか?」

 そして、聞こえてくる低い男の声。

(男の声?)

 ぱっちりと目を開くと、吐息のかかる距離で伊達の顔があった。

「な、ななな……!?」
「Sh!騒ぐなよ」

 落ち着いた様子で私の口を大きな手で塞ぐ伊達は、悪戯が成功した子供と同じ顔で笑っている。

 伊達は一応藍染めの着物を着ているようだが、眼帯は外さずそのままだ。
 左目をよくみると、睫毛が長いな、と感心してしまう。
 鼻梁も通っているし、全体的に顔のバランスがいい。
 こういうのを格好いいと言うのだろうか。

「何をしている」

 私が落ち着いたのを見て取ると、伊達は手を離してくれた。
 私が深呼吸してから睨みつけると、意外そうな顔で見つめ返され。
 次いで、意地悪そうににやりと笑う。

「一人寝は淋しいだろうと思ったからな。
 Thanksしろ」

 その言い方がまるで子供に言うような言い方だったので、かちんときた。

「私はこれでも十八だっ」

 ついでにその勢いで伊達を布団から蹴り出し、立ち上がる。
 すでに体力もほとんど回復し、わずかに呼吸が苦しい程度でしかない。
 この分なら朝方までにはでていくことも出来るだろう。

 布団から追い出された伊達は、すぐにあぐらで座り直すと、私に向かい合った。

「Ha!そのBodyのどこが十八だ。
 どう見ても十二、三だろ」

 確かに私は背も低いし、胸もないし、幼児体型だ。
 だが、それを責められる筋合いはない。
 身体の成長なら、三年前から止まったままなのだから。

「ガキっぽくて悪かったな」

 言い返せば、ますます笑みを深める伊達に、私は不安が首をもたげるのを感じていた。
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