護国舞姫の剣
□2#米沢城に連れ込まれ
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地面についたら、直ぐに私は伊達から離れようと考えていた。
助けてもらったことには違いないが、肩に荷物のように担ぎあげられるなんて、屈辱以外の何者でもない。
そりゃ、体格差を考えれば当たり前なのかもしれないけれど、それにしたってもっと他に運び方があるだろう。
だが、伊達は私を下ろすどころか、そのままどこかへと歩き出す。
「離せ……」
暴れようにも仕事が終わった後で、その上戦闘にまでなった後では二度の舞は私の体力をひどく消耗させている。
腕一本上げることだに億劫で、囁く声しか出せない。
弱々しい私の言葉など伊達には届かなかったのか、彼はその歩みを止めようとはしなかった。
次第に馬の嘶きが近づき、もう一人の気配が現れる。
「政宗様、その女は?」
「拾った」
あれ、私は拾われたのか。
そんなわけあるか。
「冗談はいいから、おろせ」
私の呟きに答えはなく、私を馬上に乗せてから、伊達が私の耳元に口を寄せて囁く。
「アンタ、動けねぇんだろ。
大人しく攫われろ。
You see?」
同じ馬に乗った伊達が私を強く引き寄せる。
その時にふわりと匂うこの場に似つかわしくない香にふっと気持ちが和らいだのは、それが聞き覚えのある香に近かったからだ。
今は亡き姉の好む香、穏やかで優しい中に凛とした佇まいをみせる香だ。
傾奇者と知ってはいたが、こんな戦装束にも香を焚き染めているとは。
「……やはり、馬鹿だな」
私の声は届いていたのかどうかわからないが、伊達は少し笑ったようだ。
私は目を開いても疲れの為か視界がブレて定まらない。
「政宗様、お戯れは程々になさいませ。
どこの者ともしれぬ女を迎えるなど」
隣に馬の並ぶ音がする。
その名前が片倉小十郎景綱と知れたのは、その後の会話からだ。
「ごちゃごちゃ言うな、小十郎。
この俺が女ごときに遅れをとるか」
「しかし、政宗様!」
「一応、俺はこいつに命を救われたようだからな、怪我が治るまでぐらいは面倒みてやるさ」
後半は私に言ったらしいと気づくのに、少し時間がかかった。