お題
□その笑顔は反則だから
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「鳳珠様!お帰りなさいませ。今日はお早いのですね」
「ああ、ただいま。珍しく仕事に一区切りつけられてな。」
少数精鋭で保っている為、滅多に定刻では帰宅しない戸部尚書、黄鳳珠は珍しく夕刻に姿を現した。
「今日は夕飯も一緒に頂けますね!嬉しいです。」
ふふ…っと本当に嬉しそうな微笑みを浮かべる名無しさんに、鳳珠は複雑な心境になった。
「すまない……」
「え?」
結婚したばかりにも関わらず、共に過ごす時間はとても少ない。
むしろ、交際していた時のほうが会っていたかも知れない。
仕事が忙しい、と言ってしまえばそれまでだが、今のような反応をみると名無しさんに申し訳なくて仕方がなかった。
名無しさんは不満を言った事もないから、余計に。
「幸せにすると言ったのに……私は、お前に幸せを貰ってばかりだな……」
「何を言ってらっしゃるんですか!」
気がつくと、目の前には少し怒ったような顔をした名無しさんと、
きゅ…っと、握られた手。
「私は、鳳珠様と一緒にいられて幸せです!
だって、私しか知らない貴方がたくさんいて……きっと、今みたいな鳳珠様を知っているのも私だけですもの。時間の多い少ないなんて関係ないですわ。
私は……鳳珠様と一緒にいられるだけで、幸せなんです。」
「名無しさん……ありがとう」
感謝と、愛しい気持ちを込めて、抱き寄せた。
「鳳珠様…そのお顔は、反則ですわ…」
(私の頬は、朱色に染まっていた)(貴方の心から幸せそうな笑顔が)(眩しくて)