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□問い
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一週間前。
ある案件を処理し終わり、旺季と共に邸へ戻る帰り道。
行きは馬で来た2人だったが、朝から飽きもせずに降りしきる雪のおかげで馬に乗ったまま進むことも出来ないため、仕方なく馬を引いて歩いていた。
しばらく黙って考え込んでいた旺季は、ふいに歩みを止めた。
「こう足場が悪くては、邸に着くのにどれだけ時間がかかるかわからんな…。早くしないとそろそろ日が暮れる。……皇毅、私はちょっと引き返して松明を取ってくる。先に馬を連れて進んでいてくれ。」
「この雪の中を戻るなど…私が行きます!」
「大丈夫だ。それより、馬を頼むぞ」
「……わかりました。」
言っても意味がないと判断した皇毅は、諦めて手綱を受け取り、再び歩き出した。
今となっては、その時の自分を馬鹿かと鼻で笑ってやりたくなる。
………初めは、仙女かと、思った。
雪の降りしきる、真っ白な世界に倒れていた1人の女。
透き通るような白い肌と、美しい黒髪。
あのとき、一瞬、時間が止まった。
いつもなら…そう、今までなら。
どこの誰が行き倒れていようとも、それこそ死んでいようとも気にかけることなど無かったのに。
気付くと、馬をその場に置いて旺季様の元へと走っていた。