小説部屋
□Happy Birthday for 渚カヲル
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まだ蒸し暑さの残る、9月のこの時期。
体育館の窓は全て開け放たれているが、全校生徒が集まっている為、人の熱気がこもりかえって蒸し暑い。
髪が首筋に張り付いて気持ち悪くなったのか、カヲルはくしゃりと、癖のある銀髪をかきあげた。
『ヒトより』あまり汗をかかない質だが、流石に全くかかない訳ではない。
鬱陶しさを感じながら、どこか上の空で先生の話を聞いていた。
何度も聞いた話。カヲルは、
耳にタコができるって、こういう時に使うのかなぁ。と、頭の隅でぼんやり考えた。
「…このたった10cmにも満たない隕石が、なぜあのような大災害を起こしたのでしょうか。それは…」
光速の95%という、とてつもないスピードで墜落したため、地球に大きな衝撃をもたらしたのです。
何度も聞いた文句を、心の中で言葉にする。
次いで、スピーカーから同じような文句が流れる。
学校だけじゃない。
カヲルは、NERVやゼーレの施設でも、こうして散々聞かされて来たのだ。
こうして全くの嘘を、まるで 本当のことのように公表して、真実をひた隠しにする。
それは、カヲルにとっては到底理解しがたいものだった。
「………こうした環境変動により、20億もの人がなくなりました。
その後、インド・パキスタン間で難民同士により武力衝突が発生。
これを発端に、紛争が世界中に
広まりました。
隕石の落下から、臨時休戦条約が結ばれるまでの約半年の間に、世界人口の約半数の人々が亡くなったのです。
今日は」
今日は
「その隕石の落下が起きた忌々しい時から、丁度16年」
『渚カヲル』の
「セカンドインパクトが起きた日です」
生まれた日だ。
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