ずるり、肉片が足に絡まる。

ひどく粘着質のあるそれは足の裏に絡みつきまるで離さぬとでも言いたげにべたりと張り付いた。

それは一体どこの部位だったのか。内臓か神経か、それとも名も知らぬ部位なのか。そんなことは知らないし興味もない。

これでリーダーから受けた任務は終えた、あとは帰るのみ。張り付いた肉片を不愉快そうに見下ろし地面に擦りつけ取って、歩き出す。
一度肉片がついたせいか、歩くたびにべたべたと嫌な音が辺りに鳴り響き砂利が付いているような気がして小さくため息をつけば。




「おー、派手にやったな、旦那」



ざっざっ、と砂を踏む音と低い声音。

元々気配はあったため特に驚くこともなく足を止め、視線をついと動かし声の主を確認した。
鮮やかな髪色の束がゆらりゆらりと揺れるのを見て、所々爆破の後が伺える姿に瞬き一つ。


「終わったか」

「とりあえずな、うん」



デイダラ。どうやらあいつも自身に与えられた任務を終えたようで勝気な笑みを浮かべこちらに寄ってくる。

暁から支給されたコートの端が焦げていた。きっと奴の芸術のせいだろう。まったく、手際の悪い奴め。
これだから爆発などという芸術は理解できないのだと心の中で笑いながら俺も奴の方へと向かう。


「暁のことをこそこそ嗅ぎ回る奴は殺したし、これで任務完了…ってことか。うん」

「そういうことだ」

「それにしても旦那、ちとやり過ぎじゃねぇか」


これでもう帰るだけ。しかしデイダラは俺の後ろを眺めながら言う。

愉快そうな声音で言うデイダラは面白おかしく思っているであろうことが伺え、ピクリと眉が動くのを感じながら俺も後ろを見た。

そこにあるのは暁のことを嗅ぎ回っているという男の無残な姿。四肢をもがれ地面に肉と血が混じった滑り気のある液体が轢かれており汚らしく辺りを赤く染めている。


やり過ぎ、か。


いつも通りにやったつもりだが、今日は緊急の任務でリーダーに対し少なからず不満があったためそれが出たのかもしれない。


「四肢ごと切り離す必要あったのかい?」

「…うるせぇ、帰るぞ」

「苛々してんなぁ。生理?」


苛々が言葉に刺を持たす。するとデイダラは変わらぬ声音の調子でふざけたことを抜かすものだから、ヒルコの尾を反射的に揺らす。
勿論目標はデイダラ。奴の髷に突き刺すつもりでヒルコの尾を振りおろせば、直ぐ様それを感知したデイダラが一歩引き「落ち着けって」と笑う。

笑っている辺りまだ俺をからかっているのだろう。本当に糞むかつくガキだ。


「ごめんって旦那」

「…」


とりあえず無視して歩き出す。

デイダラはさして気にする様子もなく俺の後ろをついてきて、これでようやく帰れると内心一息ついた時。


「……旦那」


デイダラが名を呼んだ。なんだ、と視線だけで奴に聞けば彼はひどく愛しげな目と声音で笑う。


「帰ろっか」

「…」


きゅっ、と手を握ってくる。よく見ればデイダラの手も所々血で濡れており俺の手の血と混ざり合う。

任務終わりで人の命を奪ったその余韻、興奮、そこから2人で手を繋ぎ共有することが2人の通例なのである。
今も、残虐な行いをした可笑しな余韻にどうも胸の高鳴りが鳴り止まない。嫌に興奮している。


「帰ったら風呂でも入ろうか、うん」

「そうだな。生臭くてたまりゃしねぇ」

「ほんとにな」


にゅじゅり、と足元にある柔らかな肉片を踏み潰しながら俺たちは二人で笑いあった。


もう既に殺した男の名など、覚えていない。





『君を嗤 欲の声』のすずき様から
交互記念に頂きました


うわあぁぁぁ//素敵過ぎる(´∀`*=*´∀`)
冷たさの中に愛があるよ!
私の方が興奮しました!
甘しか書けない私にはキュンキュンが止まらない//


すずき様!
この度はこんな素敵文をありがとうございました//

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