声優BL

□しもかじ小説〜優しい君〜(下野紘 視点)
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俺には好きな人がいる。
その人は梶君でいつも俺の後ろを付いてきてくれる人で優しい人だ。

梶「下野さん。」
下野「あ。」
梶「何考え事してるんですか?悩みでもあるんですか?」

今日も優しく俺に話し掛けてくれる。
そんな梶君が好きだった。
誰にでもできる事なのに、なぜか俺にだけ優しくしてるように見える。

梶「―……さん?下野さん!」
下野「はっ!!あ…ゴメン梶君……。」
梶「熱でもあるのかなぁ?」

ぴとっ…

そう言うと梶君は自分の手を俺のおでこにあてた。
あぁ…梶君の手…あったかいな……。

梶「熱は無いみたいですね。気分はどうですか?」
下野「平気だよ。」
梶「よかった。」

ホッとしたような顔で俺を見つめた。
なんでこんなに優しいんだろ。
俺はこんなに優しくされたこと無かったから頭おかしくなりそうだった。

梶「下野さん。今日飲みに行きませんか?」

梶君にそう言われ、一緒に行くことになった。
一緒に行くのも久しぶりで、一人上の空だった。

梶「下野さん。今日変ですよ?どうしたんですか?」
下野「いや…梶君の気のせいじゃないかな?」

本当は変だったかもしれない。
でも梶君は……。

梶「そうですよね!下野さんが元気ない訳無いですよね!」

明るく振る舞ってくれる。
俺はついついこう聞いてしまった。

下野「梶君は好きな人いるの?」

言ってしまった……。
聞いちゃダメなのに……。
ほら…梶君困っちゃった……。
俺のせいだ…と頭の中でループしていた。
梶君はこう言った。

梶「い……いますよ。」
下野「いるの……?」

俺は、その言葉を聞いて一瞬にして終わったと思った。
梶君は話し続けた。

梶「じゃ…相談に乗ってくれますか?」
下野「え?あ…うん。いいよ……。」

何で相談に乗るんだよ!!馬鹿か俺は!!
そう心の中で叫んだ。
……でも梶君が本気で好きな人についての相談に乗るのも先輩として必要だと思い、話しを聞いた。

梶「その人は俺にとって大切な人で…決して手放してはいけない存在なんです。でも…俺…まだ片思いなんです……。言ったら今の関係が壊れそうで…怖くて……。」

梶君は俯いて、そのまま黙ってしまった。
俺はそれに応えられなかった。
そして…梶君は再び話した。

梶「下野さん……俺…どうしたら…いいんですか…?毎日そう思うと苦しくて苦しくて……。こんなにも近くにいるのに……。」
下野「近くに…いる?」

――ドキッ……

俺の心臓が一瞬跳ねたように感じた。
俺は…何を勘違いしてるんだろ……。
梶君が好きなのは俺じゃないのに……。

梶「近い…のに……。」

――ドキッ……

また跳ねた……。
やめろ……。

梶「下野さん……。」

ドキッ…ドキッ……。
やめろ!!

バン!!(机を叩く)

下野「やめろ!!」
梶「下野……さん?」
下野「ごめっ…梶君……。俺…そんなつもりじゃ……。」

ああ…もう終わった……。これで梶君とはいつも通りに仲良く出来ない。
馬鹿だな……俺は。
でも梶君は……。

梶「大丈夫ですよ。下野さんは悪くない。俺……帰りますね。」

なんで……なんで、こんな時まで優しくするんだよ……。

下野「ごめん…。」

俺は謝る事しか出来なかった。
この日はこのまま家に帰った。



バタン…(ドアを閉める)

下野「はぁ……。悪いことしちゃったな……。メールだけでもしとこう……。」

カチカチ…カチッ

下野「ちゃんと返事来るかな……?送信…っと……。」

俺は酒を飲んだからか眠気に襲われ、そのまま寝てしまった……。


――翌日。

俺は眠い目をこすりながら支度をした。
そして…携帯を見た。
すると………。

『本当に大丈夫ですよ。明日も一緒に行きませんか?俺、下野さんと行くのが一番楽しいんです。』

そう書いてあった。
俺は嬉しくなりメールの返事を返した。

仕事場に着いた俺は、梶君を探した。
でも梶君はどこにも見当たらない。
スタッフに聞いたところ、梶君は急に貧血を起こして倒れたという。
俺はスタッフにどこにいるのか聞き、急いでその場所に向かった。

ガラガラッ…(ドアを開ける)

下野「梶君……?」
梶「………。」

梶君は寝ていた。
俺は梶君が目覚めるまで傍にいることにした。

――もう何時間経っているだろう?
今だに梶君は目覚めない……。
貧血っても馬鹿に出来ないと思った。

下野「梶君……。」

俺は小さく梶君の名前を呼んだ。
すると……。

梶「下野さん……?」

梶君は目を覚ましてこっちを見ている。
一気に気持ちが落ち着いた。
そして梶君はこう言った。

梶「夢…見てた。」
下野「夢?」
梶「下野さんの夢です。下野さんと恋人になった夢で……俺、変ですかね?」

梶君はニッコリと笑った。

梶「下野さんと恋人になって嬉しくなったな……。現実じゃ無理かもしれませんけど……。」
下野「無理じゃ無かったら?」

また聞いちゃった……。
なんで危険な場所に足を踏み入れようとするんだろう。

梶「それは現実だったら……ですか?」
下野「うん……。」
梶「……いいかも…ですね。」

――ドキッ

ああ……。また怒鳴っちゃうな…これは…。
なんでこんなにドキドキしてるんだよ……。

下野「それ、本気?」
梶「だったら……何ですか?」
下野「……いや……。」

俺は自分で聞いといて黙ってしまった……。

梶「下野さん……。俺……ハッキリ言うと…好きな人ってのは……下野さんなんですよ……。」
下野「え……?俺の事…好き…なの……?」
梶「だから……こんな夢を見たのかもしれませんね……。」
下野「梶君……。」

俺は嬉しくなった。
今にも泣きそうなくらい嬉しくなった。
俺はいつの間にか梶君に抱き着いていた……。

梶「下野さん……?」
下野「俺…梶君が……好きだ……。ずっと好きだった……。でも伝えられなくて……今の関係が崩れたら嫌だって……だから………。」

泣きながらそう言うと、梶君は『ありがとう。もうこれ以上言わなくても……いい。』と抱きしめてくれた。
これが……恋。
俺は…梶君と恋人になれたんだ……。
そして梶君は……。

梶「今日お泊り会みたいのしませんか?もちろん二人で。」
下野「いいよ。」

今日から二人だけの思い出を作り出す………。

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