白衣の帝王

□突き落す
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なまえは真面目な面持ちで、考えた。
そして

「……」


―――そのうちなまえは、考えるのを止めた。(※この間僅3秒)


不貞腐れ顔で両腕を机に投げ出しては、そこに上半身をあずけ思い切りだらけた姿勢となるなまえ。なまえは無言のまま、動かなくなった。


「……、」


そこでリドルはハッと本から顔を上げた。





“―――こいつ、寝る”





そう直感的に思ったリドルは「おい、」となまえの頭を叩くように本を乗せた。角を。


「んえっ……何ですか、もう。」


地味に痛かった筈にも拘わらず、なまえはパッとしないぼんやりとした声で返す。ゆっくりと上半身を起こし、目を擦っている。
そんななまえに対し、リドルは『本当に寝るのか……』と若干呆れた視線を寄越した。しかしそれでも、常日頃俺様的マイペースで生きているリドルにとっては些事だ。案の定堂々としたマイペースっぷりを発揮して口を開く。


「先程も言った様に、保健医補佐は“希望者の中で最も優れた成績を残した生徒が選ばれる”」


そこでなまえは、蒼ざめた。





“春休み明けの試験で、群を抜いた高得点を残さなければならない”





その台詞を聞いたのはまだ記憶に新しい。


「ふぅん?君にしてはよく覚えていたね。」


その声にハッとして、なまえはリドルを見上げた。
リドルは肘を付いて顎を乗せフ、と軽く口角を上げた。


「どうやらバッタ以下であろう脳みそでも、流石に覚えているらしい。」
「!?」


この先生は、何故必要以上に私を貶すのだろうか。

なまえはそう思わずにはいられなかった。せめてもの抵抗として「バッタはバッタでも仮面ライダーだ!」と言ったがリドルに伝わったのかは良く解らない。……あっ、瞬きが止まった様子から伝わっていなかったらしいと窺える。


「こ、高得点って」
「文字通りさ。成績は確実に上位でなくてはならないからね。」


なまえは絶句した。口を開けたまま息を吸ったため変な音が出た。


「それまでみっちり勉強だ」
「死ぬうぅぅぅ……」


なまえはバッと机に突っ伏した。


「ただし、雑用は少しくらい控える」
「生き返るうぅぅぅ……」


バッと顔を上げる。


「勘違いしてないかい?その埋め合わせ以上に、君は勉学に励むんだ」
「そして死ぬうぅぅぅ!!!」


再び突っ伏した。額を強く打ったらしく、ゴッと鈍い音が響く。彼女の周りには効果音が多い。


「さ。もう君に用は無い」


リドルはそう言い切ると、嗚咽を漏らしているなまえの首根っこを掴み、無理矢理上半身を起こす。その過程でなまえがくぐもった声を漏らしたがお構いなしだ。なまえは首を抑え摩っている。


「ちょ……ちょっと位は気を遣ってくれt」


リドルは華麗に無視した。
なまえは何を思ったのか、ハッと眉を上げパチリと瞬きをした。そして


「せん―――んぐっ」
「触るな聞こえている!」


リドルの裾を掴み、耳へ顔を寄せ大きく口を開けたところで、顔面を思い切りリドルに押し戻されていた。なまえの大声を知っているリドルは、その俊敏さと表情へ若干の動揺が見え隠れしたように見えなくもない。急に動いたため前髪が少し崩れてしまっている。


「えーだって」
「あ?」
「……ごめんなさい。」


こめかみをじわじわと指圧された辺りでなまえは素直に謝った。リドルはフンッと鼻を鳴らし、手を離す。なまえは冷や汗を流しながら両頬を手で包む。


「君にもう要は無い。」


要は帰れ、と先程の台詞をもう一度言った所でなまえが「あっ」と顔を上げる。リドルは「今度は何だ」と呆れた視線でなまえを見下ろす。











「先生、さっき食べた紙、喉に指ツッコめば吐けるかな?」
「余所でやれ見苦しい。」




リドルはついに、なまえを椅子から突き落とした。



























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それにしてもなまえさんの大声に構えるリドルさん。





       

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