白衣の帝王

□ノンレム睡眠の可能性
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なまえは押し寄せる睡魔の波を阻止する自制心と言う名の防波堤などからきし持ち合わせておらず、心置きなく爆睡していた。
因みに前回の話から、日付は変わっていない。数時間前にレギュラスと別れた後だ。つまり―――


閉館になったことに気付かず、
独り図書室の一角で眠っているのだ。


机に突っ伏したまま寝ている彼女を起こす者は居なかった。ただでさえ二階のしかも端っこにある席なため見付けにくく、いよいよ管理人に気付かれなかったのだ。
独り暗い図書館の中。しかし、彼女は幸せそうだった。


……リドルが現れるまでは。

















「ん、う―――ゴッホォ!?ゲホッ、ゲッホッ……!」

気持ちよく眠っていたなまえは、突然感じた息苦しさに目を見開いて咳き込んだ。「何事か!?」と当然勢いよく目を覚ます。そして咽ながら、隣に自分の首を絞めていた人影を確認した。……リドルだ。


「なっ……何ですか!?」


裏返る頓狂声でリドルを見上げる。
しかしリドルはいつものしらを切ったような表情で隣に座る。


「なんで出合い頭に絞殺しようとするんですか!!」
「君の睡眠力は異常だね」


目を凝らせば、机に本を広げるリドルの表情に呆れが混じっている。その事に気付いたなまえは、首を捻る。


「もしかして、殺そうとしたんじゃなくて起こそうと……?」


……いや、もしかしても何もない。
リドルは


「勘が良いね」


とだけ、全く抑揚のない声で言った。
なまえは口を尖らせて、不貞腐れたような声で言う。


「じゃあもっと、別の起こし方してくれればいいじゃないですか」
「試したさ」
「えっ」
「全く起きない君が悪い。だから最初に言っただろう?“君の睡眠力は異常だね”って。」
「……」


なまえさん……
目を逸らしているようですけど、貴女の事ですよ。


「だ、だとしても、流石に首を絞める以外の方法がー……」


またまたぁ、となまえは冷や汗を交えてへらりとした笑みを浮かべる。
しかしリドルは―――


「君は永眠したいんだね?」


即座になまえの笑顔を凍らせる。
起きるなり浴びせられるショッキングな発言。なまえは『何この目覚め。悪夢?』と閉口した。



***



「そういえば、先生はどうしてここに?」
「……それを君が口にするのか。」


視線を投じるリドルに、笑顔のままキョトンと首を傾げる。
その様子を目の当たりにしたリドルは「周りを見てみろこの愚鈍」と額を突いた。なまえはグリグリと押される額に片目を瞑りながらも、もう片方の目で辺りを見渡した。


「んー?人っ子一人居ないですね。お外なんて真っ暗です。」
「つまり閉館後なんだよ、今は。」
「へぇー……ぇえ!?」
「生徒はとっくに立ち入り禁止の筈なのに、どうして君がここに居る。」
「居眠りしていたら、ついノンレム睡眠に突入してしまいまして」


リドルは呆れる傍ら、少し首を傾げた。

……誰にも気づかれずに、
鍵を掛けられてしまう事などあり得るのだろうか。

確かにここは、階段側から見えにくく、気付きにくい。
しかし、明かりが就いているある為……

――否、
そう言えばなまえを見付けた時、明かりは消されていた。
そこため闇に包まれて、奥まで行かない限りなまえの姿を見つける事は絶対に出来ない。

そうなるために、誰かが明かりを消し、
意図的に彼女を独りに……?

――一体何の為に。










「君、」


リドルは思案顔のまま、なまえを呼ぶ。そして見上げた双眼に、向き合った。


「明かりは誰が消したんだい?」
「私です。」
「は?」


あまりにあっさりしている答えに、リドルが呆けた表情でなまえを見る。なまえは頬を掻いて笑っている。


「いやぁ、眩しいと寝辛くて。しかも眼前に明かりが燈っている訳ですから、もうここぞとばかりに消灯にかかって」
「……」
「?ほら、アレですよ。目覚ましが五月蠅いと透かさず消すじゃないですか?」
「……」
「アレです。」
「…………」
「えっ……?じゃ、じゃあ、コレはどうですか?寒くて目が覚めると、寝ている最中に蹴とばしたであろう毛布を―――いたたたっ!?何か悪いことしました!?私今何か悪い事しましたか!!?」


リドルは何も答えず、頬をひたすら抓った。


――君の言っている言葉がピンとこないとか、
そう言う次元の話じゃないんだよ。







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リドル先生が思うような謎なんて
何処にもありませんでしたとさ。(笑)



※ここから先どうでもいい話
1話の長さについて。

サマウォ連載では、1話あたりワード約3ページに収めているんですよ。そこで「白衣は何ページ分だっけ」と調べてみると……何と7ページだったんですよね。さらに7ページ×2とかありますからねおっかない。
正直、読む人にとっては怠いのではないかと(笑)
という事で、今回は短めに納めてみました。
きっと次回からもこの長さになると思います。

短すぎるかな……(´`?


                    

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