白衣の帝王

□リーマス・シリウス
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「それにしても、ジェームズはどうしたの?」

リーマスの問いに、なまえは「ジェームズ?」と首を傾げた。

「メガネをかけてて、くしゃくしゃの黒髪で……シリウスと同じ問題児だよ」
「ロクなやっちゃないな。」
「おい、聞こえてるぞ」

屈託なく笑うリーマスと遠慮のないなまえに、思わずシリウスがツッコんだ。

「俺は何とか逃げたけど、あいつは捕まったみたいだ」

後頭部で腕を組み、シリウスはゴロンと寝転ぶ。

「今日一日逃げ切れる、と思ったんだけどなー」
「一日?」
「そ。シリウスもジェームズも今日一日ずっと逃げ回っているんだ。だから授業も出てないし」
「うわぁフリーダム」

ニヤリと笑うシリウスに、少し位は反省したらどうなの?とリーマスは眉を下げる。

なまえはふと、そんな二人を見た。
リーマスは制服もある程度きっちり着ているのに対し、シリウスは着崩している。
何だか対照的だなーとぼんやり思っては、ふあ、と欠伸をした。

「ということでリーマス、後で今日の分のノート見せてくれないか?」
「はいはい」

困ったように笑って、リーマスは「それじゃ、僕は日誌書かないといけないから」と言って立ち上がった。


「じゃ!私も戻―――」


伸びをしたなまえの裾を
シリウスが掴んだ。
なまえが振り返る。


「―――ん?何?」


シリウス自身も驚いたような顔をして、パッと手を放した。


「……いや、なんでも、ねぇけど……」
「んー?」


なまえは首を傾げたが、やがて踵を返して歩き出した。
そして前を向いたまま、シリウスへ向けてヒラヒラと手を振った。


「―――あ」


シリウスは、そのなまえのしぐさを見て目を丸くした。



―――どこかで、見た後ろ姿に


重なる背中と、その仕草。




……どこだった?




シリウスはもう一度パタリと後ろに倒れて寝転ぶと、空を見上げた。




―――ああ、そういえば、あの時―――



シリウスはそっと、目を閉じる。


**

あれは、昨日……否、一昨日の事だっただろうか―――

いつもの様に悪戯をして、ジェームズと二手に分かれて逃げていた時のこと。
窓から飛び降りた俺は、

「―――っ……!」

木に飛び移ったはいいものの、枝で足をすりむいてしまい、思わず根元で屈みこんでいた。
舌打ちをして、ガシガシと頭を掻いていた時―――

「いてっ!」

額に何かが飛んできた。……割と痛い。
苛立ちつつも疑問に思い、それを見てみると……

「傷、薬……?」

傷薬の小瓶だった。丁寧にハンカチまで括り付けてある。
誰だろう、と飛んできた方向へと目を向けると

「―――あ、」

ヒラヒラと手を振る少女の後ろ姿。(……てか結構遠いな。その距離で投げたのか?)

肩程度まで伸ばされた、黒い髪がサラサラとなびいている。
―――見たことない、奴だった。


誰だろう、と思うと同時に、思わずフと笑ってしまった。

「普通に渡せよな、」

一言声を掛けようと、そちらへと足を向けた時―――

「シリウス!こっちだ!」

ジェームズの声だ。
そうか。それどころではなかったのだ。
その小瓶をポケットへとつっこんで、俺はジェームズの元へと駆けだした。


**

「これ、あいつのだったのか……」

空に掲げた小瓶を眺めながら、シリウスはポツリと零した。
陽の光を浴びたそれはキラキラと輝いて、綺麗だ。


きっと転校してきたばかりだった筈。どうりで見たことが無かったわけだ。



―――なまえ、か。



「今度、返さないとな」


シリウスはあの時の様にふと笑って
再び目を閉じた。


小瓶を握り締めながら。

  




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※3月です。最高気温11度程度です。

寒くね!?という……(笑)

リーマスは普段は穏やかで優しいけれど
自覚なしの黒さと微量の天然さ兼ね備えてると素晴らしいと思うんだ。
  
   
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