ムゲン

□相思相愛の意味
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「―――だって相思相愛だからね。」


リドル君は例の如く、とても当たり前にそう結んだ。因みに前後の会話はもう忘れた。今二人で座って居る、この芝生についてとかそんなどうでもいい事だった気がする。


“相思相愛”


何か解せない事が起きた時、たいていこの回答に行き着いて私は撃沈する。
そもそもそんな四字熟語、さらっと口にするには重すぎると思う。そして恥ずかしいと思う。そんな複雑な思いももちろん微かにではあるが抱くときもある。
しかしmarutto丸められては、もう返しようがなくてはい撃沈。

と、そんなパターンがもはや日常化していて、私もついつい慣れていた。


しかし今日は違った。日常を粉砕しては打破したい系遣る瀬無い思春期少女で行こう、そうしよう、とかそんな気分な私だからだ。日常は粉砕しようそうしよう。

と、言うことでリドル君を見上げた。


「あの、前から疑問に思ってたんだけど」
「うん」


……あ。不意に思ったけど、
リドル君って意外としっかり相槌を打つよね。


「――って、そうじゃなくって」
「うん?」
「いや……相思相愛って、何?」


リドル君はハタ、と本を読んでいた手を止める。


「君はそんなものも知らないのかい?」


リドル君は目を丸くして、私の顔を覗き込むように見下ろして――って何でちょっと目を丸くしたの今。


「知ってるよ。知ってるからこそ聞いているんだよ。」
「はぁ……?」


うわっ、私が頭おかしい人みたいな目で見ていらっしゃる。


「何、と言われたって、そのままの意味だよ」
「いや、うん。いやいやそうじゃなくて……」


私はもう、目が充血するのではないかと言う位に、まじまじとリドル君を見上げ、見つめていた。

頭の中はこうだ。
私の中の相思相愛と彼の中の相思相愛とは、意味やニュアンスが多分異なっているだろうから、リドル君の言う相思相愛とは一体何なのか、ということをだね……


「君は相変わらず、厭な目をしているね」
「んえぃっ!?」


思わず変な声が出た。藪から棒過ぎて。
厭な目って……これも、何だかお互いで意味が違う気が―――


「相思相愛の意味、ねぇ」


そうそう今はそっちか。


「そんなものは、改めて問うような、または答えるような事柄じゃないだろう?」


そう、遠くを見ながらクイと口角をあげたリドル君。
そよ風が吹いて、名も知らぬ花弁が舞う。心地よくその黒い滑らかな髪が靡く。


「口にしなくとも、解りきったことだからね」
「――……」


はたしてそうれはどうかな!と
そう答えることもなんだか面倒くさくて、もう全部どうでもよくなってきた。

ただ、クスリと笑ったリドル君の表情は――やっぱりなんだか、下手くそに思えた。









             

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