ムゲン

□彼の目
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リドル君はなんだか、厭ぁな目をしている。


私も彼も11歳の筈なのに、そうとは思えないような厭な、なんとなく厭ぁ目。

例えば授業にて、誰かが鈍くさいミスを犯した時やそれ故に自分へ火の粉が降り掛かった時、彼は実に素晴らしく嫌悪に満ちたような厭ぁな目をするのだ。不思議と誰も、気づかない様だけれど。

さらには彼が一人で居る時。
猫の目は夜、月明かりの元光るけれど、人間の目は光らない。それは科学的に証明されている。しかしリドル君の目は、薄暗く、鈍い光を発するような、逆にものすごく先鋭な光を発するような、とにかく厭ぁな目をしている。

私はそれらに直面する度に



「(うー、さぶっ)」



そうやって悪寒をポケットかどこかに仕舞い込む。叩けば二つに増える気がしてそれ以上は触りもしない。







―――そんな思い出が今、
走馬燈の様に駆け巡った……













「聞こえなかったのかい?」



目の前で彼は、そう言った。
私を壁に押しつけて、さらに首を掴んでいる。
その表情は実に不気味だ。
微かに見開かれた様な目や、やはり微かにつり上がる口角が、餌を前にした蛇のようで。にじむ好奇心のようなものを、寄せられた顔やこの距離に感じた。

因みに私の表情はといえば、もうビビりすぎて白目でもむき出しそうなものだと思う。


「では、もう一度言おうか」


にこりと、そう微笑んだ表情はなんとまあお美しい。
美少年だったあの1年生の頃からもう3年程が経つけれど、やはり今でも美しいままだ。それどころか色気まで身につけ始めたおっかないリドル君。彼は確実にそして着実に、顔面偏差値鰻登り中だ。勝ち組街道を華々しく闊歩する者の容姿。そのすらり長身や長い足なんて、それなんて鬼に金棒?

さらに一歩寄られたこの距離は、もう密着といっても申し分ない。
薄い唇が、そっと開く。


「ムゲン。君は実に、厭な目をしているね」


―――その言葉に、私は一瞬で呆けた表情となった。

少し遅れてやっと「へい?」と気の抜けた声が出る。
リドル君が少し方眉をあげたものだから、私は思わす、続けてしまった。


「それは、私が思ってることだよ。リドル君に対して、ずっと。」


冷静な自分が「私の命日は今日だ。」と告げた。
しかしその予想は大きく外れた。リドル君は私の首を掴んで―――というか軽く絞めていた手をゆるめ、驚いた様に少し目を丸くしながらこちらを見下ろしていた。……さっきから思ってたけどこの人っていちいち動作が小さいな。


「“ずっと”……?」
「うん、一年の、時から……サーセン……」


一応雰囲気的に謝罪を入れながら、おずおずとリドル君を見上げた。すると突然、首を絞めていた筈の手に顎を捕らえられる。あまりの勢いの良さに驚きと痛みを感じながら、冷静な私が「そらみろ命日じゃ」と自暴自棄に。

リドル君はしばらく私の双眼を見た。
じっと、食い入るように。
その表情は―――何というか、強いて言うなら“信じられない”とでも言いたげな……?
私はもう疑問符ばかりをうじゃうじゃと宙に浮かべて、見つめ返していた。
すると











「なんだ。相思相愛じゃないか」











……は……?




躍動感あふれるぶっ飛び方な発言に、
本日何回目だろう、呆けた顔で見上げれば、


「―――!」


リドル君は、へったくそな顔で笑っていた。
いつも、人形のように綺麗な笑みを浮かべる筈なのに
本当に、下手くそな顔で。






























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小説を移動前には

“あ、『甘』……?
リドルはなんだか常識が通用しないような、
本当にどこかがおかしい人だといいなぁー
とか思って書いたら本気で意味不明過ぎた。
しかし彼の中ではごく当たり前のことをごく当たり前の流れでごく当たり前に伝えただけだと思っているといい。
……
リドルファンの皆様すみませんでした。”


と記した自分がいたっぽい。

            

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