ストレイト!
□08.
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引き攣る笑みでそう答えると、
コイツは少し、目を丸くした。
……え?いやいやいやいや
あそこまでしといて何吃驚してんのあの状況で「いいえ」と答える阿呆は流石にいないだろうこっちが吃驚だよ。
「“あなたのものです”……か」
「そう、か、そうか、」と切れ切れにこぼしたコイツを、「あぁ?」言った表情で、見上げる。
「ふふ、良い言葉だね」
そう残し口元に手を当てながら、くすぐったそうに笑っていた。ほんの少し、頬をピンクに染めながら。
「―――!」
……確かに、
確かにコイツは異様で異質で危ない変態だけど……
「お前……」
―――そういう、
人間らしい表情もするんだ。
無邪気とも呼べそうなその表情に、
思わず目を丸くして、呆けた表情となる。
「“お前”だなんて失礼だね」
「……仕方ないだろ、名前知らないんだ」
ごく当たり前のことを言ったのに……何その反応。
え?何でそんなに吃驚してんの?
「僕を、知らない……?」
知るわけ無いだろハゲ初対面だぞ(きっと)。
……あと、いちいちさほど知らない人の名前まで覚えるのが面倒なんだよ、ボクは。
「僕は君を知っているのに?」
……関係ないだろ!
何で僕が知っている=相手も知っているみたいな思考なんだ!?
「君の未来の主なのに?」
コイツ馬鹿だろ!!
「まあ、いい」
そう言って、スと手を差し出した。
「僕の名は、トム・マールヴォロ・リドル。……いずれ名前は変えるけど」
「……、」
どう反応すればいいんだよ。
「ボクは―――みょうじ。」
「そうじゃないだろう?」
「は?」
「僕が聞きたいのはそっちの名前じゃない。」
はぁ?と眉を歪めてしまった。
「どっちだって一緒だろ」
「そんなことは無いよ」
「……そもそも、ボクの事は知っているといったじゃないか」
「だから僕が『知りたいのは』じゃなくて『聞きたいのは』って言ったじゃないか」
あーはいはいそーですかーと
ぶっきら棒に目を背ける。
「……」
「……」
じっとこっち見下ろしてんじゃねーよ
期待に満ちた視線の気配が鬱陶しいんだよ……!
押し黙っていたのに、どういう訳か
先程のコイツの笑った顔が脳裏を掠めた。
……あーもう
「なまえ」
ぶっきら棒に呟いて、その差し出されていた手を掴んだ。
コイツ―――リドルは、目を丸くした。
「なまえ・みょうじ」
握ったまま、グイグイと何度か上下に振る。身長とか性別の差もあって、細いけれどやはり大きな手だった。
「……よろしく」
ぼそりと言いながらもう一度ぎゅっと手を握り、見上げた。
……だからそういうキュンとした表情するのやめろ!
今までの過去なんて
無かったように歌いだすんだ
(……少し魔が差しただけ。)