小説

□妹が水色でクルクル
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その背後で、ようやく衝撃に打ち勝ったウィードが立ち上がる。
「おい!」
普段ならばいきなり女性に怒鳴ることなどまずないウィードだが、今回ばかりは眉間に皺寄せ怒声を張り上げる。
「あんた、フェアを何処へやったんだ!?」
妹がいなくなったかわりに、妹の服を着てそこにいる女。しかも目の前で人外の戦いを展開した魔王と何やら親しげなのだ。
こんな怪しい者をそこらの町娘と同じ扱いをする者はそうめったにいないだろう。
「フェア?誰ですの?」
「その服…フェアのじゃないか!」
「……ああ」
再び、冷たい表情をするリリス。事も無げに言い放つ。
「この、体のことですわね」
「訳わかんねえよ!元に戻せよ!!」
「嫌ですわ」
平均より魔力の高いフェアの体は他より使い勝手が良い。そしてそれを奪い返そうとする者が現れた。
この体にこだわる理由はそれだけだが、彼女が人間を殺そうとするには十分だった。
突き出した白い手の平に水が渦を巻く。
魔法など使えないウィードにはそれをいなす手段がない。
殺される!
妹を奪われて頭に上っていた血が引いていき、足がすくんだウィードは思わずリリスの目の前に身をさらしたまま立ち止まった。
完全なる失策。戦いの場においてこれ以上に愚かな行動はない。
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