小説

□妹が水色でクルクル
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見知らぬ女の問いに、ウィードは答える余裕がなかった。
フェアじゃない。
フェアが何処にも見当たらない。
その事実が彼から言葉を奪っていたのだ。
「……もう!答えて下さらないなら、用は御座いませんわ」
女の腕、氷の刃を纏った腕が振り上げられた。
役に立たぬ人間を、まずは排除してしまうつもりなのだ。
後はその手を茫然自失のウィードの首に振り下ろすのみとなったとき、壁の穴から男の声がした。
「よっ」
その、軽く力をこめるために発せられた何気ない声に弾かれたように女は振り返った。
「ブラン様!!」
「おお、リリスではないか」
穴からひょっこりと顔を出したのは森で少女と死闘を演じた半裸の男…ブランだった。
リリスと呼ばれた女は、瞬く間にウィードから関心をなくして歓喜の叫びを上げながら立ち上がる。
「私のことを覚えて…!」
「いや、今思い出した」
胸の前で手を組んだ彼女の目はキラキラと輝いて、仕草、表情、声色の全てから喜びが溢れるようだった。
その喜びは、ブランの返事に一瞬打ち砕かれたが、回復までには1秒もかからない。
「でも…でも思い出して頂けたのですね!」
音符マークにハートマーク、そういった物を振りまくようにして大きな胸を揺らしながらリリスはブランに駆け寄った。
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