小説

□魔王の名は……。
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突然入って来て……攻撃して……何なんだこの人!?

咄嗟にフェアだけは庇うべく抱き抱えたウィードは、とりあえず侵入者を観察していた。
そう決して一般的な女の子は晒さないが、チェグは晒している腰のくびればかり見ていたのではない。
一応お年頃の彼なりに現状を分析し、長い睫毛とかふっくらツヤツヤした唇も見ていた。
「くっ……」

混乱の極みのウィードを余所に、チェグの細い指は怪我人の喉に食い込んで行く。
「くっ……くびれなんて言ってる場合じゃないっ!!」
この状況で、ようやくウィードは現実に帰ってきたのだった。
「怪我人に何てことするんだよ!!」
血相を変えてウィードは怒鳴った。
チェグは、ウィードに背を向けたまま答えた。
「滅ぶが良い。悪しき者……魔王!!」
……返事ではなかった。ウィードは、完全に彼女の関心の外にいるのだ。

俺、…………無視?
ってか、魔王?

ウィードの頭がようやくこの現実を理解し始め、口を動かし「やめろ!!」と叫び、何とか駆け出した時。
チェグは一点、自分が魔王と呼んだ怪我人を睨みながら刃を繰り出し、苦しげに顔を歪めるのみだった怪我人は目を見開いた。
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