小説

□日常の終わりは半裸から。
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小狼!!

息を詰めて懐から小刀を取り出したウィード。
小狼は体は小さく、攻撃力は高くないが、群で大きな獲物を襲う性質がある。ウィードが見つけたのは一匹。
他の小狼の影を探したウィードの目には、更に緊張を高めるものがうつった。

人……、血!?

既に襲われている者がいたのである。
黒衣の……明るい髪色が多いこの地域には、まずいない黒髪の男。年格好はウィードと同じ位だ。

しかしウィードには、その様な外見の奇異さに注目する余裕などなかった。
彼は平々凡々な農村生まれ、自分が襲われたなら逃げ切る自信があるが、意識がないらしい者を守っての戦いには自信がない。
というか、一応戦略は思い付いたのだが、小刀を投げて小狼を追払おうにも、倒れている彼に当てない自信がなかった。
「どけっ!!」
とりあえず、その辺りの石を投げ付ける。
これなら多少当たっても痛いで済むと思ったのだ。
「ギャンッ!」
「おい、あんた!大丈夫か!?」
運良く一頭の小狼に石が命中し、小狼は一斉に警戒の色を強めてウィードから距離を取った。
その隙に、ウィードは倒れて動かぬ男を助け起こし、男を連れて村の方へと逃げ帰った。

まさかこの、ちょっとした非日常が、平凡な自分から平凡な人生を奪い去ろうとは……この時のウィードには思いも寄らなかったのだった。
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