天使系小説

□蠅の街 後日談
1ページ/4ページ

記録的な嵐に襲われ、多数の死傷者が出た街の大通り。
洪水の痕跡もそろそろ消え始めたその場所を長身の男が歩いていた。
小綺麗に整った衣服や、貴族的風格を醸し出す顔立ちにはなかなか結び付かない一言が男の口から洩れた。

「はあ…お腹が空いた」
その後から後から、もう駄目だの死ぬだのぼやいてる。
「…ん?」



「もう、やってらんないよ。三キロも太っちゃった!」
「キャシー、あんた間食止めないから…。ここん所増えてた〜おデブ軍団の仲間入りね!」

彼の視線の先では、少々稚拙な化粧をした女が二人で話していた。
「違うわ!だって…ストレスよぅ」
「あはっ、そんなじゃイイ男は寄り付きやしないわねっ」
「むかーつく〜!彼氏できたからって何よ!」
ポッチャリした女が膨れるのに対し、すらっとした方が顔を輝かせた。
「そう♪トニーったらね!」
「アニタ止めてよ、また太るわ!あんたときたらノロケばっかり」
「恋バナは女の仕事っ♪」
止まらないことは百も承知、そんな顔をして拒否するのを諦めた丸っこいキャシーは、ああアタシも彼氏欲しいなと心で呟いた。
しかし認めるのは悔しいので口に出さない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ