天使系小説

□蠅の街6
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「ほーら、驚いた」
予想通りの反応に、ベルゼブブがおどけ仕草で笑いかける。
しかしベッドの上の『あれ』はジョークとして笑い飛ばすには、茶目っ気で済ませるには度を超し過ぎていた。
凍り付いたまま返事もしないエミリーに興味をなくしたかのように堕天使は歩き出した。
突っ立ったままのエミリーを素通りしてベッドサイドに立つ。
そしてベッドの上のものにちらと目をやり、次はエミリーを見る。
その様子は芸術家が己の作品の全体を見渡そうと画怖から距離をとる姿に似ていた。この作品が一般受けしないのは断言できるが、ベルゼブブが満足げな所を見ると地獄の住人には評価されるのかもしれない。

「ヨセフ君、ガールフレンドがお見えだよ。挨拶位したらどうだね?」

返事はなく、咀嚼音だけが室内に響いていた。

ベルゼブブがベッドに視線を注ぎ、ラードの詰まった袋のようなものに変化が見られないのに溜め息を吐いた。
しかし堕天使の次の行動は、肉塊から反応を引き出すことに成功した。
『それ』が口にしている物を引ったくったのだ。
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