天使系小説

□蠅の街2
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「放せ!放さないか、汚らわしい悪魔め!!一体何をするつもりだ!」
生ゴミを漁る猫すらいない暗い路地、人の耳には聞こえぬ声がした。
何もない右手に向けて、地獄にいたときすら見せなかった邪悪な笑みを唇に浮かべるコートの男。
「別に、君が知っても何の特にもならないことだよ。弱き守護天使君」
「何だと…?お前のように下劣な者が、よくも侮辱してくれたな!覚悟す…ぐっ!?」
うっすらと不快感を滲ませた無表情で、ベルゼブブは握り締めた天使ごと拳を壁に叩き込む。
ただ叩きつけるだけでは、霊的存在の天使には殆ど意味がないのだ

「誰に…」
「…っ?」
「誰に物を言っている?」
打撃を受けて顔をしかめた天使が見たのは焔。
憤怒の赤に嚇嚇と燃え立つ六枚羽を露わにした強大な元熾天使の瞳の奥にたぎる殺意。

それは哀れな天使が生まれて初めて見たものであり、同時に最期に見たものであった。
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