天使系小説

□蝿の街1
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人の暦では2002年冬。
人々がハルマゲドンだの恐怖の大王だのにしきりに関心を示した大世紀末も、2000年ショックもすっかり過去の物として、愚かな杞憂のレッテルを貼られた頃のこと。



 その日、地獄の底では宴会が開かれていた。
あの恐怖と絶望の淵は黄金色に輝き、歓声が溢れ、住民達は歌い踊っていた。

 その喜び様と来たら、煉獄で罰を受けるべき魂達まで今日は受けるべき責め苦を免除された程で、罪人達は親しみやすい笑顔で肩を組み、祭の輪に入るよう勧めてくる堕天使や悪魔達に戸惑った。
この宴会が開かれたのは、この前の天との抗争でルシファーを庇い、御子の放った鎖で雁字搦めにされたベルゼブブが、ついにその鎖を打ち破ったからである。
 宴会の輪の中で、ルシファーの隣に座したベルゼブブは少々やつれてはいたが、その力は毫も減じず他を圧倒する光を放っていた。
蝿の王に皆が賛辞を投げかけ、それに彼はいつもと変わらぬ笑みを返す。


 しかし、七つの大罪の内『大食』を司る彼にしては、今日は食が細いのはどうしたことだろう?
そう、彼にはある企みがあったのだ。
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