お題
□6.台風の夜
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「…まぁ、いいけどよ…」
亮はあたしの悲しい顔に弱い。
それは長年亮のお隣さんで幼なじみとして付き合ってきたあたしにとっては承知のこと。
「やったね☆」
あたしは亮にお礼を言うと、ベッドに潜り込んだ。
「…怖くなったらすぐ言えよ」
うん。
亮はいつもこうだよね。
文句言いながらもちゃんとあたしを心配してくれて。
外に耳を澄ませると、さっきよりも風と雨がひどくなってきたみたい。
「…亮」
「ん?」
床にお客用の布団を敷いて、そこに入ったばかりの亮の方を見て、言った。
「こっち、来てよ」
「……は?!」
「…怖いから。早く」
亮を急かすのは、あたしも恥ずかしいから。
「…わかったよ」
亮は渋々とあたしの寝ているベッドへ入ってきた。
「ふふ。幼稚園の時もこんなことあったよね」
一つのベッドに2人が入るのは、思ってたより体が近かった。
「亮、顔真っ赤」
「うるせー」
でも、そんな亮といると台風のことなんか忘れちゃって。
全然怖さなんかなくなった。
あたしと亮はこのまま何もなく眠りについたけど。
握りしめてくれた手があったかくて、
この、幼なじみという関係が
終わるのも近いかな。なんて思った。
それは、中3の台風の夜。
†fin†