今夜はから騒ぎ
□第六話
2ページ/2ページ
「…ただいま」
昼過ぎに幸村がふらりと戻ってきた。
顔は明らかに光を無くし、涙が流れた跡が鮮明に残っている。
「精市…!」
真田が必死の形相で駆け寄り、幸村を抱き止め抱え上げた。
「大丈夫なのか!?精市…!」
「…ぅ、ん。ブン太と、ジャッカルの…お陰でね。…それより…雅治、に…会いたい…」
幸村は力無さそうに微笑んだ。
庭にいた赤也と柳も心配そうに二人を見つめている。
「…雅治は比呂士と一緒だ。連れていこう」
真田は幸村に軽く口付けると奥の部屋へと向かっていった。
「…蓮二さん、せいいちさん、大丈夫ッスか?」
「きっと…大丈夫だ」
赤也の目がだんだん潤んでいく。
柳は悲しそうにそれを見ると、ふわりと赤也を抱き上げた。
「俺達は一回帰ろう。次来たとき精市が元通りな確率、97%だ」
「うぅ…っ。…はいッス」
「…精市君!?どうなさったのですか!?」
「すまない…比呂士。雅治、と…二人にして欲しい」
幸村は真田に布団に下ろしてもらうと、仁王に支えられた。
「…精市」
仁王も苦しげな表情をしている。
柳生は真田に連れられて未練がましく出ていった。
「…雅治、治せる?…今は夜じゃないけれど」
「邪気を吸いとるのはいつでもできるけぇ、負担はかかるが…何があったんじゃ…?まさか」
「そう。君をそんな風にした張本人と、あと二人…いるんだ。君に邪気を向けてる…奴等が」
「…取り敢えず、吸うな」
仁王は幸村の肩に手を置いた。
そうすると仁王の全身が黒い邪気に覆われる。
「く…!、ぁ、はぁ…!っん」
苦しげにうめき声を上げる仁王とは対照的に、幸村の顔がだんだんと明るくなっていった。
「…雅治、ごめん…ごめんね…俺、お前を守れないかもしれない」
幸村は崩れ落ちた仁王を抱き止めて、悲しそうに言った。
「…えぇの。だい、じょぶ…ゃから、おれ、明日…行ってくる…」
仁王は決めていた。
幸村や柳生達と暮らしたいから決めたのだ。
幸村は何も言わずにただ仁王を抱き締めて ありがとう と呟いていた。