短編 立海

□Make sure...?
1ページ/2ページ



ドゴ、と鈍い音が聞こえた。

うめき声の後、自嘲めいた笑い声が静かに路地に響く。

今ここに転がっているのは本当に一人の人間がやったものなのか。 逆光を浴びてこちらを向くその男は 魔王 と呼べる程の威圧感を醸し出していた。


「危なかったね、お前」

壁にへばりついて動けなくなってしまった彼女に どんどん近付いてくる。

「ぁ…の」
彼女の口からは弱々しい声しか出なくて、身体の震えも止まらない。


帰り道いきなり手を引っ張られ、数人の不良めいた男達に無理矢理脱がされて…


「ぅ…ぁ…」
嗚咽を漏らしながら下着だけの身体を隠す。

「ふぅん…」
何かを考えているような男。

もう嫌だ。

「お前も…うちをヤるんか…」
気が付けば、彼女は情けない声でそう呟いていた。


「へぇ、ヤって欲しいの?ぐちゃぐちゃにしてやろうか?」

そう言いながら男は手を伸ばす。


手が頭に触れたところで、彼女は意識を失った。




「…ん」
「やあ」

「ぇ…!?」


彼女が ガバッと起き上がると そこは彼女が通っている学校の保健室だった。

横を見ると、儚げな少年が微笑みながら彼女の方を見ていた。

「目が覚めたね、気分はどう?俺は幸村精市。お前の名前は?」

雰囲気とは似合わず 威圧感のある物言いに 彼女は気圧されながらも答えた。

「仁王…雅…じゃ。お前か…助けてくれたの…」

「仁王…変な名前だね。うん、そうだよ。危ないとこだったんだから」

幸村はそう言いながら手を仁王の頬へとすべらせた。

「まあ…襲いたくなるのも解るけどね…俺がヤってあげようか?」


仁王はビクリ、と反応し 震える声で言葉を紡いだ。

「皆…うちの身体目当てなん…?だから助けるん…?一体…何のつもりで…」

肩を震わせ泣き始めた仁王の頬を 幸村が優しく撫でた。

「お前…気に入った」

そう言いながら ベッドに乗り上げ、仁王の肩を押す。

絶望的な表情で幸村を見上げる仁王は かなり官能的で 幸村は思わず舌なめずりをした。

「あのさ」

突然発された言葉に 仁王がビクリ と固まる。

「お前、俺の女になれ」
「…は!?」

唐突な言葉にきょとん とする仁王。
そんな仁王の額に軽く口付け、幸村はベッドから降りた。

「…な…っ!」

顔を真っ赤にして額を押さえる仁王に 意地の悪い顔で微笑む。

「拒否権なんかないよ。お前は俺に借りがある」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ