勇者だって人間だ

□第四章
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「彼奴のいとこと言うとアーシュ・アリア、であるな」


うわああ……

いきなり核心突いてきたよこの人。

一人ではどうにもできないと思い、仲間へ視線を送る。

一番頼りになりそうなアーティは、自業自得だから自分でどうにかしろって目が言っている。

ディンは俺の窮地を見て、それはそれは嬉しそうに笑っていた。

後で絶対殴る。

オウルは土いじりしていて話すら聞いていない様子。

残るはアレクのみ。

いやでも、コイツが口を開いたら状況が悪化するような気しか……


「な、な、何を言ってるんですか! ニケさんがアーシュ様なわけないですよっ!!」


ああ、二進も三進も行かないレベルまで真実に近付いてしまった。

今や女帝は、満面の笑みだ。


「詳しく話を聞かせてもらうぞ、ニケ殿?」


くはっ、と独特の笑い声が聞こえる。

あまりの他人事さにディンを睨むが、その隣でアーティも肩を震わせていた。


「お手柔らかにお願いします、ウィステリア様」


どうして今まで話さなかったか問い詰められると思うと頭が痛いが、観念するしかないようだ。










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no side









ヴァロアの外れに位置する鬱蒼とした森の中で。

深紅のローブを身にまとった男が一人、木の枝で地面に絵を描いている。

すっぽりと被ったフードの隙間から除く歪んだ笑みは、アリア王に仕える薬師のそれと全く同じである。

歩き回り地面を削るうち、大きな魔法陣が完成した。


「[彼等をこの地へ、ディスタンスリープ]」


その魔法陣からは次々と筋骨隆々な二足歩行のウサギらしき生き物が次々と現れ始める。

やがて、人間の子供くらいの大きさの化けウサギは辺りを埋め尽くす程の軍勢となった。


「キシャァアアアアッ!!」


戸惑う様に辺りを見回していたウサギ達は獰猛そうな鳴き声を上げる。


「早くおいでよ、勇者サマ。遊んであげる」


近くにいた男へ襲い掛かろうとしたウサギを尻目に、男は姿を消す。

後に残されたウサギの大群の怒り狂う声が森に響いた。


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