水縹色の氷花

□不穏と平穏
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なんて気持ちのいい空だろう、彩月は箸を片手にぼんやりと空を見上げていた。


(ずっと屋上にいたくなっちゃうなぁ。ここなら空を近くに感じられるし…)


完全に気が抜けていた。そのため、みんなの話も彩月の耳に入ることはなく。


「おい、彩月!」

「・・・」

「彩月!」

「…へ?」

「へ?じゃねぇよ。きのうの報告!」

「ほう…こく…?」

「おまえ、ついに祐一みたいに話の途中で寝るようになったのか…?」

「俺は起きている」

「今日は、だろうが!」


真弘の呼び声で空に向けていた意識を戻した彩月は、しばらくしてようやく状況を把握した。


「わわ、ごめん…!」

「めずらしいね、彩月ちゃんが話聞いてないなんて」

「ちょっとぼーっとしちゃって…」

「ひょっとして、具合悪い?」


珠紀は心配そうに彩月の顔を覗き込みながら言った。


「ううん、全然。大丈夫、大丈夫!えーっと、きのうの見回りの報告…だよね?」

「あぁ。俺の方は特に異常なしだったからな。次は真弘先輩と彩月の方の結果だ」


拓磨はもう一度自分の見回り結果を言うと、彩月たちにも報告を促した。


「俺らの担当した場所も侵入者の形跡とかはなかったよな」

「うん。祐一先輩と慎司君のところは?」

「俺たちのところも問題ない」


あのロゴスとの戦い以来、守護者一同は定期的に宝具の納められた封印域を見て回っている。宝具を奪われないようにするためというのはもちろんだが、見回りをする理由はもう一つあった。


「それにしても、宝具の封印が一つなくなるだけでここまでカミの様子が変わるとはな」


拓磨が言う通り、宝具が奪われ封印のバランスが崩れたことにより漏れ出た鬼斬丸の力が、周囲のカミに悪影響を及ぼしはじめているのだ。それは最終的にカミの凶暴化を引き起す。
屋上の昼食風景はいつもと変わらず平和だが、放課後は以前より確実にやることが増え、多忙になっていた。






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