水縹色の氷花
□欠けた封印
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モナドと名乗る少女に宝具を奪われてしまった翌日。
昼休みの屋上は一見いつも通りに見えたが、実際はみなそれぞれ様子が異なっていた。
(みんなどこか上の空って感じ。拓磨なんか持ってるクロスワードパズル上下逆だし…。あ、真弘の焼きそばパン中身こぼれてる…)
守護者たちをぐるりと見回した彩月が、一人そんなことを思っていたとき。
「…なんだ。みんな、やっぱりここにいたんじゃない」
どこか沈んだ空気が漂う中、それを打ち破るような比較的明るめの珠紀の声が屋上に響いた。
「ここにいちゃ悪いかよ。俺がどうしようと俺の勝手だろ」
「…べつに、悪いだなんて言ってないよ」
「女の心配をむげにするようじゃ、男は終わりじゃねぇの?なぁ、拓磨」
真弘はこぼれた焼きそばを口に放りながら、面白半分に拓磨にそう言った。当の拓磨は、いかにもつまらないといったふうに横を向いてしまった。
そのまま再び、屋上に静寂が広がる。
(やれやれ。このままの空気はさすがにちょっとつらいかな)
「珠紀ちゃん、お昼ごはんは?」
彩月は、所在なさげにしていた珠紀に声をかけた。
「え…まだだけど…。でも、今日持ってきてないから…」
「あれ、美鶴ちゃん作ってくれなかったの?」
「そういうわけじゃないよ。美鶴ちゃんは作ってくれたんだけど、私が断っちゃったんだ」
「…ふむ…じゃあ…」
彩月は立ったままだった珠紀に座るよう促すと、自分のお弁当のサンドイッチを持って珠紀の隣に移動した。
「私の作ったサンドイッチでよかったらどうぞ!」
「え、でも…」
「今日のは自信作なんだよ!だから、食べて感想聞かせてくれたらうれしいなぁ…」
「サンドイッチに自信作とかあるのかよ。パンに具材はさむだけじゃねぇか」
「何よ!真弘だって、ただ焼きそばはさんだだけの焼きそばパンにいろいろこだわりあるくせに」
「焼きそばパンをバカにするなよ!パンにはさむ焼きそばの味とか硬さとかでかなりできが変わってくるんだからな」
「それならサンドイッチだってそうでしょ!このたまごサンドなんて、絶妙なマヨネーズ加減っていうのがあるんだから」
「ま…まぁまぁ」
くだらない争いに発展しつつある彩月と真弘を、ちょうど間にはさまれていた珠紀がなだめる。
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