水縹色の氷花

□ロゴスの聖女
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方向感覚がくるってしまいそうな薄暗い森の中を、彩月は封印を目指して歩き続けた。そうして、ようやく封印場所である大木のそばまで来たとき。


「俺、やっぱ彩月と珠紀探してくる!」

「待て、真弘。珠紀はおそらく拓磨が探している。彩月もここに向かっているはずだ。今おまえが行ってすれ違いでもしたら、余計面倒なことになる」


彩月の耳に聞きなれた声が届いた。思わず駆け足になり、視界がパッと開けた瞬間、目の前には少し前に到着したらしい真弘、祐一、慎司、卓の四人がいた


「よかったー、みんなここにいてくれて…」


合流できた安心感から、強張っていた肩の力が少し抜けたのを彩月は感じた。
そこへ、今にも探しに行こうとしていた真弘が駆け寄り、彩月の身に何事もなかったことを見て取ると安堵の息をついた。


「龍野さんも、無事のようですね。これであとは鬼崎君と珠紀さんだけですか」

「拓磨先輩も珠紀先輩も、大丈夫でしょうか…?」


慎司は心配そうに森を見つめた。


「二人のことも心配ですが、こちらもいつ敵が襲ってくるかわかりません。みなさん、周りへの注意を怠らないように」


卓の言葉に、全員静かにうなずいて警戒態勢をつくりあげた。



それからほどなくして心配されていた二人も合流したが、深まっていくばかりの怪しい気配に、緊張は緩むどころか増す一方だった。


「…敵、来ないね」


珠紀がぽつりとつぶやいた。


「…いや、来る。仕掛けてきたのは向こうなんだからな」


拓磨が断定した口調で言った、その直後だった。
緊張をはらんだ静寂の中、不意に足音が聞こえた。とても軽い、小さな足音が。

闇の中から現れたそれは、少女の姿をしていた。
年のころは十に届くかどうか。
大きな青い目が印象的で、そこには、どこか人を超えた何かがあるようだった。
そして、少女の姿をした別の生き物ではないかと思わせるくらい、穢れのない清廉な雰囲気をまとっていた。

当然、この少女はただの少女ではない。何せ、幾重にも張り巡らされた結界を突破して、わざわざこんな場所に現れたのだから。




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