水縹色の氷花
□ロゴスの聖女
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「なぁー、彩月ー!いいかげん機嫌直せよー」
放課後、卓と合流し異常が感じられたという封印へ向かう道すがら、真弘はひたすら彩月のご機嫌をとり続けていた。
「だーかーらー、別に私機嫌悪くなんかないってば!」
「ならなんでずっと険しい顔してるんだよ!いつもより口数も少ねぇし…」
「そ、それは…」
(言えない…。後で冷静になってみたら、他の人にやきもちを妬くほど私は真弘のこと好きになってたのかって気づいて自己嫌悪におちいってました、なんて…)
あからさまにやきもちとわかる行動をとってしまったことへの恥かしさ、そして自分の背負った運命上、これ以上真弘を好きになってはいけないという葛藤。真弘が声をかけている間、彩月はずっとこのことをぐるぐると考えていたのだ。
「と、とにかく!この話は終わりにしよう、ね?本当に、真弘に怒ってるとかそういうんじゃないから」
「…ほんとか?まぁ、それならそれでいいけどよ」
真弘はいまいち納得がいっていない様子であったが、徐々に封印の場所に近づいているということもあり、それ以上何かを言うことはなかった。
森に入り、卓は封印の点検に向かい、彩月たち他のメンバーは封印の周囲の見張りを行うということになった。
(なんか、森の空気がいつもと違う気が…)
彩月がふとそんなことを思ったときだった。
確かにすぐそばにいたはずの仲間たちの気配が、一瞬にして消えた。
「あれ…。みんな、どこ!?」
呼びかけるように周囲に向けて発した声は、静かに森の中にとけただけで、誰からもその返事が返ってくることはなかった。
(空間が…歪んでる…?)
「とりあえず、落ち着いて…。みんな封印のところに向かってるはずだよね。とにかく封印を目指して歩こう!」
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