水縹色の氷花

□動き出す影
1ページ/4ページ



ババ様の話が終わって居間に顔を出した珠紀の顔は、帰り道のときのような不満そうなものではなかった。どこか納得したような、気持ちを切り替えたような、そんな感じだった。大方、卓あたりが何か言ったのだろう。

何にせよ、慎司の歓迎会はとても楽しいものとなった。拓磨も最初こそ少し気まずそうに慎司に接していたが、そのうちそんな雰囲気は微塵もなくなっていた。



そして翌日。


「ま、この辺は特に異常なさそうだな」


放課後、彩月と真弘は学校近くの林の中をぶらぶらと歩いていた。家に帰ろうとしていたわけではなく、ただなんとなく異常がないか見回っていたのだ。


「さて、どうする?一度学校戻る?」

「だな。そろそろ珠紀たちも帰ろうとしてる頃だろ」

「うん」


二人が学校に戻ろうと歩き出した…そのときだった。


ざわ…


かすかだが、何か嫌な感覚が二人の体の中を走り抜けた。


「…な…なに…?」

「おまえも何か感じたか」

「うん、この感じは…」


二人は同時に、異常を感じる方を見た。


「あっちは…宝具の封印域か!」

「まさか、宝具が…!」

「ちっ…行くぞ彩月!」

「あ、う、うん!」


走り出すと同時に、背中を風に押される。真弘が風の力を使ったおかげで、通常では考えられないスピードで体が前へと進んでいった。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ