水縹色の氷花
□六人目の守護者
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きのう、おとといは少し大変だった。
おとといの蔵での調べ物はといえば、開始早々に珠紀が体の不調を訴えったため、特に新しい発見もなく終了。まぁその後の話し合いで、鬼斬丸に関する現状は思っているよりもずっと深刻かもしれないということは把握できたのだが。
そしてきのう。珠紀が学校帰りにタタリガミに襲われた。なんとか守護者の助けが間に合ったため大事には至らなかったが、珠紀はかなり怖い思いをしたらしい。戦いが終わったとたんに泣き出してしまった。やはり守護者のうち誰か一人くらいは珠紀についているべきだったと、全員で反省会をしたのは言うまでもない。
「でもほんと、間に合ってよかったよねぇ…」
「一人で帰ったあいつも悪いだろ。危険だって言っておいたのに」
「そうは言うけどさ、拓磨。珠紀ちゃんは護衛されることに慣れてないんだよ?わざわざ近くに見当たらない私たちを探し出して、『帰りたいから一緒に帰ってください』なんて言えないでしょ」
「無事だったんだからいいじゃねぇかもう。今度から目ぇ離さねぇようにしておきゃよ」
「真弘は楽観的すぎるんじゃない?」
「おまえが細かいこと考えすぎなんだよ」
「えー、そんなことないと思うけど…」
彩月は拓磨や真弘の考えにやや不服であったが、確かにいつまでも考えていたって仕方がない。今度こそ珠紀に危ない思いはさせないぞ、と彩月はひそかに心に決めるのだった。
そしてそんなところにちょうど、話の中心人物である珠紀がやってきた。
「うーん。今日もいい天気だなー」
屋上のドアを開けるなりそう言った珠紀は、次に自分の後ろに向かって何事か言い、勢いよく何か…いや、『誰か』を前に押し出した。
「あ、あの、お久しぶりです。覚えてないかもしれないけど…」
珠紀の後ろから登場した人物は、中性的な顔立ちをした、彩月たちにはどこか見覚えのある男の子だった。
「…お、おまえ、まさか…」
「…慎司…くん…?」
「はい。帰ってきました」
その言葉に、クロスワードパズルと格闘していた拓磨とぼんやり風景を眺めていた祐一が顔を上げた。
「おまえ、いつ!」
拓磨が驚きの声をあげ、祐一は少し微笑んだ。
「…久しぶりだ」
「お、おおおおおおおお!え!なんだよ、いつだよ!」
「帰ってきたなら、教えてくれてもよかっただろ!」
珍しくあからさまにうれしそうな声をあげた拓磨が、慎司に駆け寄ってその頭にヘッドロックをかける。真弘も久しぶりだなー、とばちばち背中をたたいた。
「ちょ、や、やめてくださいよ!」
そういう慎司も笑っていて、言葉に反してうれしげだった。
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