水縹色の氷花

□序章
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「ねぇ真弘、新しい玉依姫様ってどんな人かな?」


いつもの仲間が集まるいつもの屋上。といっても今日は一人足りないが。
彩月は屋上の手すりに寄りかかり気持ちのいい風に身を任せながら、椅子にふんぞり返っている真弘になんとなくたずねた。


「んー?俺が知るかよ」

「そっけない返事だなー。…祐一先輩はどう思います?」

「・・・」

「祐一なら寝てるぞ」

「はぁ…」


相変わらずよく寝る先輩だ、と彩月は思った。まぁ起きていたところであまり期待できる答えは返ってこなかったかもしれないが。


「そんなに気になるのかよ?」

「真弘は気にならないの?自分が守護する人だよ?」

「考えたって仕方ねぇだろ。今頃拓磨のやつが迎えに行ってる。明日になれば嫌でもわかるんだ」

「まぁそうなんだけど…」


そう、今屋上に一人足りないのは拓磨。拓磨は今、ババ様の命で昼過ぎに到着予定の新しい玉依姫を迎えに行っている。


「それにしても、昼から学校早退なんて羨ましい限りだぜー」

「当の拓磨はあんまりうれしそうじゃなかったけどね」


彩月は、昼休み前ちょうど廊下で会った帰りがけの拓磨が、なんとも面倒くさそうな表情で「なんで俺が…」とぶつぶつぼやいていたのを思い出した。


「私もお迎え行きたかったなー」

「なんだ、おまえも授業さぼりたかったのかよ?」

「ちがーう!私は早く玉依姫様に会いたかっただけ!…真弘と一緒にしないでよね」

「てめっ、それが婚約者に対するセリフか!?」


ガバリと椅子から立ち上がった真弘は、今にも噛みついてきそうな勢いで怒鳴った。


「婚約者でもきちんと言うべきことは言います!」

「今のが言うべきことなのかよ!」


そんなこんなで、新しい玉依姫の話からくだらない言い争いが始まり、


「…二人とも、そろそろ午後の授業が始まるぞ」


いつのまに起きたのやら、祐一が声をかけるまでそれは続いたのだった。





序章 end

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