Heroic Legend -終章の白-

□第103話 Hero The Black
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グニャリ…。


ゲーチスの周囲の空間が大きく歪んだ。

その中から"黒い何か"が現れる。


何とも形容しがたいその姿は、ポケモンどころか人間にも見えなかった。

「ご紹介致します…」

その"黒い何か"は形を瞬時に人型に変える。


「絶望の魔術師・ベーゼと名乗る男です。こんな見た目でも元々は人間でしたので、どうぞご安心を」

【ベーゼだとッ!?】

その名前に反応したのはゼクロム。

目をカッと見開き、酷く興奮したように唸り声を上げた。

「知ってるの、ゼクロム?」

失意の底に沈んでいたアローネが、ゼクロムのただならぬ様子に顔を上げる。

「知っておりますとも。このイッシュ地方に住まう伝説や幻のポケモンなら、一度は彼に会っておりますから」

ゼクロムの代わりにゲーチスが答えたが、そのあとにゼクロムが口を開いた。

【奴は…死んだとコバルオン達に聞かされていたが…。何故生きている!?】

『死んだ…? 余が、死んだだと?』

ベーゼが引きつったような狂った笑い声を上げた。

『アヒャ…ハハハハハハッ! 余は不滅の唯一無二の存在ッ、貴様らの捨て身の攻撃で死ぬ訳がなかろうッ!』

「…嫌味な野郎に下品に笑う男って、どんな組み合わせだよ…」

モクレンは汚物を見るような目でベーゼを見た。


『その女こそ、余の依代に相応しき波導を持つ者だ。さぁ、こちらに身体を渡せ。
其奴の身体にはもう女の魂は入っておらぬからな…』

ベーゼは口だけの顔でニィ…と笑う。

その顔はフォリアが夢で見た時と同じ、黒いタールの化け物と同一のものだった。


「ッ、嫌よ! 絶対に渡さないッ!」

ゼクロムよりも早く叫んでフォリアを抱きかかえたのは、アローネだった。

『…貴様、女の形(なり)をしているが男なのか?』

「そんな事は今はどうだっていいわよ!」

アローネは素早くベーゼから離れるように距離を取ると、ボールからネイティオを繰り出す。

「そこの坊やもレシラムを戻してこっちへ来なさい!」

「あ、え、ボク…?」

「それ以外に誰がいるのよ!」

アローネの気迫に押され、Nはたじろぎながらレシラムの方へ身体を向ける。

「レシラムおいで…!」

モンスターボールを取り出し、レシラムを戻そうとした時だった。



「グルァッ!」

レシラムがガバッと起き上がった。

それと同時に炎を口から吹き出す。

「レシラム…ッ!?」
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