Heroic Legend -終章の白-

□第103話 Hero The Black
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「二度と目覚めない…って、どういうことよ……」



アローネは呆然と尋ねた。

口を半開きにし、ゲーチスから告げられた真実で思考回路が止まりかけている。


「言ったままの言葉ですよ」

ゲーチスは「何度も言わせないで下さいよ」と嫌らしい笑みを浮かべた。

「黒き英雄はたった今、お亡くなりになったのです」

「嘘よッ!」

「嘘か真かは、そこでアナタと同じく呆ける者達と同じようにご自分でお確かめ下さい」

「…ッ」

アローネがフォリアに目を向ける。

あるはずだった赤みの失せた土気色の顔は、まさしく死者のそれと同じ。


恐れで一歩が踏み出せずにいると、モクレンが黙って横を通過してフォリアの元へ向かう。

「…」

ペンライトで瞳孔を調べるから始まり、呼吸、脈、心音、ある程度まで確認したモクレンはアローネの方を振り返った。



「…死んでる」

その一言でアローネは崩れ落ちた。




フォリアが死んだ。しかも唐突に。

この場にいた者は、その急な出来事に思考能力の大半を奪われた。


ただ、ゲーチスとモクレンという例外を除いて。


「健康が服を着て歩いているような奴が、死因となる外傷も無く突然死だと…。
とりあえず、狼狽えてねぇお前だけは何か知ってそうだな、ゲーチス・ハルモニア…だっけか」

「いかにも。お初にお目に掛かります、国際警察直属捜査部隊・特殊総合調査部の司令官のモクレンさん、ですよね?」

「よくもまぁ、そんなクソ長ぇ肩書きを知ってたな」

「アナタのお噂は有名ですから。特に"昔ご活躍されていた"事についてなどは詳しく…」

「チッ、見た目通りに嫌味な野郎だな」

吐き気を催したような表情でモクレンは舌打ちをする。


「単刀直入に聞く。どうやってガキを殺した?」

「殺しただなんて人聞きが悪い…!」

自分は無実だとわざとらしく演技をするゲーチスに内心ムカつきはしたが、モクレンはあえてポーカーフェイスで続ける。

「普段俺は仕事に乗り気じゃないんだが、目の前で人間…しかも知り合いのガキが死んでるんだ。
真面目に答えねぇと、五体満足でブタ箱に入れなくなるぞ」

「脅し、ですか…」

ゲーチスは、モクレンの右手に構えられたモンスターボールをチラリと盗み見ながら呟く。


「…分かりました。時間も勿体ない事ですし、ここは"彼が視える"領域ですしね…」

パチン、とゲーチスの指が鳴った。
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